小説「新・人間革命」 勇将 12 2013年 2月26日

方面・県幹部との懇談会を終えたあと、山本伸一は、翌二十日に彼が出席して開かれる香川県婦人部総会があることから、婦人部幹部と打ち合わせを行った。
 伸一は、一回一回の会合に、漫然とした姿勢で臨むことはなかった。 常に真剣勝負であった。
 したがって、県婦人部総会に対しても、登壇者の一人ひとりが、なんの話を、どういう角度からするのかを、しっかりと打ち合わせておきたかったのである。
 皆が同じような、代わり映えのしない話であったり、焦点の定まらないとりとめのない話をするならば、参加者にとっては時間の浪費となる。
 そんな会合になってしまったら、わざわざ来てくださった方に申し訳ないと、彼は考えていたのだ。
 伸一は、婦人部幹部との打ち合わせに引き続いて、副会長らと諸活動の検討を行い、さらに勤行した。
 全同志が発迹顕本し、広宣流布の大誓願に立つことを祈り、懸命に唱題したのである。
 御本尊への真剣な祈りに始まり、祈りに終わる。それが信仰者の生き方である。祈り、題目を忘れて勝利はない。
 四国指導五日目となった二十日の昼過ぎ、伸一は、四国研修道場の講堂で行われた香川県婦人部総会に出席した。
 この県婦人部総会には、婦人部への敬意を表して、壮年の代表も祝福に駆けつけていた。
 県婦人部長の荻繁美は、顔中に笑みの花を咲かせて、あいさつに立った。
 彼女は、四国研修道場が香川県にオープンした喜びを述べたあと、「経典には、『貧女の一灯』ということが説かれております」と語った。
 それは、「長者の万灯より貧女の一灯」との言葉で知られる仏教説話である。
 一人の貧女が、諸国の王や長者をはじめ、人びとが釈尊に供養するのを見て、自分もぜひ仏に供養したいと思う。
 そして、食べる物さえ満足に買えない生活のなかで、仏に捧げようと、灯火の油を買い求めたのである。