小説「新・人間革命」 勇将 13 2013年 2月27日

貧女は、祇園精舎にいる釈尊、すなわち仏のもとへ向かった。仏の前には、多くの人びとが供養した灯火があった。
 貧女も、一つの小さな灯火を供養し、自ら誓願を立てる。
 『今、私は貧しい身ですが、真心を込めてこの小さな灯を供養いたします。
 この功徳をもって、来世は智慧の照明を得て、一切衆生の無明の闇を滅することができるようにしてください』
 夜が更け、空が明るみ始めるころには、長者らが供養した灯明は、すべて滅したが、この貧女の一灯だけは、燃え続けた。
 無理矢理、消そうとしても、決して消えることはなかった。
 仏は言う。
 ──四大海の水を注ぎ、嵐をもって襲おうとも、この灯を消すことはできない。
 それは、広く一切衆生を救おうという、大心を起こした人が施したものであるからだ。
 大切なのは誠実の心である。
 信心の心が揺るがなければ、大宇宙をも照らし出す、福運の灯をともすことができるのである。
 
 香川県婦人部長の荻繁美は訴えた。
 「私たちにとって『貧女の一灯』とは何か。それは『信心』であり、『学会精神』です。
大風を受けて、ほかの灯がすべて消えても、ひたぶるな信心の心を捧げた一人の貧しき女性の灯だけは消えなかったと言います。
 これと同じように、『潔い信心』『確固たる信心』『揺るぎない信心』『地道な信心』の一念、すなわち学会精神のある限り、社会がどうあろうが、いかに         偏見の中傷、批判があろうが、私たちの一念の大福運を壊すことは、永久にできません。
 今日より、私たちは、大いなる拡大の目標へ、『福運の一灯』『福運の一念』を広げゆく前進を誓い合っていきましょう!」
 共感の拍手が鳴り渡った。
 山本伸一も、「そうだ! 婦人部がいれば盤石だ!」と叫びながら、イスから身を乗り出して、盛んに拍手を送るのであった。