小説「新・人間革命」 勇将 26 2013年 3月14日

長野栄太は、〝ハンセン病は、病自体の治癒だけでなく、患者が精神的束縛から解き放たれ、心身の健康を取り戻してこそ、病の克服といえる〟と考えるようになった。
 それには、〝社会的なつながりのなかで、ハンセン病への正しい知識を普及するとともに、患者自身が生きがいある人生を確立していくことが大切だ〟と思った。
 そのつながり方とは、〝一方通行的な従来の慈善活動にとどまるのではなく、内外双方から一般社会との隔絶を埋めていく交流である〟というのが、彼の結論であった。
 大島青松園の学会員のもとへ、学会の壮年や婦人たちは、足繁く激励に訪れた。座談会も開かれていた。
 激励に通う学会員は、ハンセン病がどんな病気かもよく理解していた。また、〝この世から不幸をなくすのだ。
 みんなが幸せになれるのが、この仏法だ!〟という、強い確信にあふれ、使命に燃えていた。
 そして、「〝仏法の眼〟から見れば、長年、病で苦しんできたあなただからこそ、誰よりも幸福になれるんです。
 さらに、地涌の菩薩として、人びとを幸せにしていく、大きな使命があるんです」と、大情熱をもって訴えるのだ。
 入所者の学会員は、その励ましと指導に心を打たれ、唱題に励み、教学を学び、仏法対話にも取り組んでいった。
 また、人に会うことを避けてきた人が、園長の許可を得て、何十年かぶりに親族の葬儀などに出かけるようになった。
 生き生きとした自分の姿を見せ、親戚や知人に安心してもらいたいとの思いからであった。社会との壁を、自ら取り除く挑戦を開始したのだ。
 長野は、そうした入所者の生き方に、希望の〝光〟を見た思いがした。
 アメリ公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キングは訴えている。
 「人生に意味を与えるのは宗教である。宇宙に意味を与えるのも宗教である。
 よき人生を歩もうと最大限動機づけるのも宗教である」(注)――そこに宗教の意義がある。