小説「新・人間革命」 勇将 42 2013年4月2日

高松講堂の建設予定地で、寒風に吹かれながら、山本伸一は地元メンバーへの励ましを続けた。
 「ここに高松講堂ができたあとは、その隣に、さらに新しい四国文化会館を造る計画で進んでいるんです。
 つまり、ここは、四国創価学会の中心となっていく地なんです。
 皆さんは、その大法城のある地域を守っていく大事な使命を担っておられる。
 したがって、皆が地域にあって、信心の実証を示し、信頼されるお一人お一人になってください。皆さんが地域で信頼、尊敬される存在になることが、そのまま信心の勝利、広宣流布の勝利になるんです。
 では、ここで万歳をしましょう。体も温かくなるから。皆さんの健康、長寿、地域の発展、高松講堂の完成を願っての万歳です」
 「万歳! 万歳!」という、皆の元気な声が冬空に広がり、拍手が響いた。
 「講堂が完成した記念の催しの時には、地元の皆さんは最前列に、誇らかに座ってください。では、記念撮影をして、すぐに解散しましょう」
 皆が笑顔でカメラに納まった。
 「大事な仏子である皆さんが、風邪をひいてはいけないので、これで終わります」
 皆の輪の中に、何人かの高齢の男性がいた。伸一は、吹きつける寒風は、老齢の身には、こたえるのではないかと思った。
 伸一は、手袋をした手を差し伸べ、彼らの顔を包み込むように覆って温めた。
 「寒いでしょう。わざわざありがとう」
 近くの国道沿いに、たこ焼きの屋台が出ていた。それに気づいた伸一が言った。
 「みんなで、たこ焼きを食べましょう。私がご馳走させていただきます」
 同行の幹部に買いに行ってもらい、寒風に吹かれながら、皆で頬張った。
 どこまでも、ありのままの伸一であった。
 励ましのために身構える必要はない。?幸せになってほしい?との、ほとばしる一念の発露が、自然に励ましとなるのである。