小説「新・人間革命」 勇将 41 2013年4月1日

 四国文化会館に到着した山本伸一は、事務室や恩師記念室を回り、職員らと懇談した。
 さらに、そこから高松市勅使町に向かい、高松講堂の建設予定地を視察した。
 そこは、川沿いにあり、吹きさらしのなか、数十人の人たちが集まっていた。
 「みんな学会の人だね。寒風のなかで、私を待っていてくれたんだな。車を止めてくれないか」
 当初、建設予定地の周辺を車で回り、それから功労者宅を訪問する予定でいたが、伸一は、ここで車を降りた。
 「みんな、こちらにいらっしゃい!」
 皆、喜々として、伸一の周りに集まって来た。壮年・婦人部もいれば、男女青年部もいた。年配者も、子どももいた。
 「待っていてくれたんですね。寒いのに、本当に申し訳ないね。この真心は、決して忘れません。なんで私が来ると思ったの?」
 「先生は、きっと、講堂の建設予定地に来てくださると確信していました。祈っていたんです」
 「私の動きも、わかってしまうんだね。でも、寒い日に表で待っているようなことをする必要はないんです。
 来ないかもしれないんだし。ところで、この辺りは、なんという場所ですか」
 「勅使町です」
 「すごい名前だね。天皇の意思を『勅旨』といい、それを伝える特使を『勅使』というんです。おそらくここは、昔、天皇の意向で開墾が進められたところなんでしょう。
 それだけ、すばらしい場所なんです。そこに高松講堂ができる。そうなれば、ここが四国発展の、精神の発信地になります。
 だから、『川もあって寒いし、殺風景なところだな』なんて思ってはいけませんよ。
 大事なことは、何事にも意義を見いだし、希望に、勇気に、前進の活力にしていくことなんです。
 そこに、心の豊かさがあり、強さがある。また、価値の創造があるんです。一念の転換で世界を変えるのが仏法なんです」