小説「新・人間革命」 奮迅 2 2013年5月4日

方南支部は、杉並区南東部に位置し、方南一・二丁目と、和田一・二丁目の一部を含む、環状七号線沿いの住宅街と商店街からなる。
 中野区、渋谷区、世田谷区に接し、支部内を善福寺川神田川が流れている。
 会員世帯数は四百八十余世帯で、大ブロック(現在の地区)が九つある大きな支部であった。
 皆が広宣流布の拡大の意欲に燃え、前々年の一九七六年(昭和五十一年)には七十二世帯、前年の七七年(同五十二年)には七十五世帯の弘教を達成していた。
 一月十一日のことであった。新宿区内で行われた、東京の代表者会議に出席した山本伸一は、杉並長の三枝木健次の姿を見ると、微笑みながら言った。
 「私は、できれば、東京の支部結成大会に出席したいと思っています。杉並で推薦できるところはありますか」
 三枝木は、即座に答えた。
 「ございます。方南総ブロックといって、会員世帯は五百近い大きな組織です。模範的な活動を推進しております」
 「そうですか。今回は、これまで最大に頑張ってきたところに出て、皆さんを讃え、励ましたいんです。
 必ず行けるかどうかはわかりませんが、これから日程を検討します」
 三枝木は、降って湧いたような朗報に、小躍りしたい思いにかられた。
 その後、学会本部と連絡を取り合い、開催は一月二十七日の夜に決まった。
 「この日ならば、山本会長が出席できる可能性が高い」ということであった。
 二十七日の支部結成大会は、全国に先駆けての開催となる。
 伸一の出席のいかんを問わず、その成否は、全国の支部に大きな影響を与えることになる。何事も初めが大事である。
 それが、一つの基準となり、目標となって、全体が続いていくことになるからだ。
 「最初の1歩は最後の1歩につながる。
 最後の1歩も最初の1歩からである」(注)とは、イタリアの登山家ラインホルト・メスナーの言葉である。