小説「新・人間革命」 奮迅 19 2013年5月25日

支部という活動推進の大切な要となる組織のリーダーとして、広宣流布を担っている支部長、支部婦人部長の苦労は、並大抵のものではあるまい。
 自身も若くして支部長代理として、個人指導に、座談会にと奔走した山本伸一は、その大変さを、身に染みて感じていた。
 しかし、一生成仏に至る仏道修行が、容易であろうはずがない。だから、伸一は、訴えずにはいられなかった。
 「皆さんの組織のなかには、愚痴や文句ばかり言う方もいるでしょう。 入会しているのに、学会に反感をいだいている方もいるかもしれない。
 また、なかなか、こちらの誠意が通じない方もいるでしょう。
 なかには、隣近所や一族からも疎んじられている、孤独な方もいるかもしれない。
 そのなかで、わが地域に仏法の人間共和の都をつくろうと、広宣流布の指揮を執る皆さんのご苦労を、私はよくわかっているつもりです。
 なんの利害も考えず、自らの大切な時間を使い、命を惜しまずに、涙ぐましいまでに奮闘してくださる。
 それは、まさしく、仏がなさんとされた『開示悟入』の労作業を、仏に代わって実践している尊き姿です。
 仏の使いでなければ、日蓮大聖人の本眷属でなければ、決してできない崇高な努力です。
 その方々を、三世十方の諸仏が守護しないわけがない。そうした皆さんが一生成仏できないわけがない。
 そうでなければ、大聖人の仏法の真実の仏道修行はどこにあるのか!
 ここにこそ、大聖人の真の弟子として、元初の太陽に照らされ、大福運の輝きを放つ人生の凱歌があることは絶対に間違いないと、私は、強く、強く、断言しておきます」
 参加者は、その大確信に触れ、込み上げる歓喜のなか、新しき法戦への決意を固めた。
 伸一は、一句を詠み、結びとした。
  
  慈悲の剣   王者のつるぎ  師子奮迅