小説「新・人間革命」 奮迅 20 2013年5月27日
荒川区は、一九五七年(昭和三十二年)八月の夏季ブロック指導で、伸一が最高責任者として指揮を執った思い出の天地である。
大通り沿いにはビルが建ち、町の景観は大きく変わってはいたが、それでも当時の名残をとどめる建物もあり、車窓を眺めるだけで懐かしさが込み上げてきた。
荒川文化会館は、白亜の建物であり、既にその威容を現していた。
「すばらしい文化会館になるね。庶民の町の『庶民の大城』だね」
伸一が、車窓から建物を仰ぎながら言うと、車に同乗していた幹部が告げた。
「荒川のメンバーは、『弘教の大勝利をもって、文化会館の落成を祝賀しよう』と言って、喜々として仏法対話に全力を注いでいるとのことです」
「嬉しいね。一人ひとりの『信心城』『勇気城』『勝利城』の建設があってこそ、『広布城』たる新会館の完成になるんです。個人の人生の勝利なくして、学会の勝利はない。
学会の会館は、広宣流布の本陣です。御殿ではない。本陣は、戦いのためにある。
したがって、本陣の完成を最大に祝賀するものは、戦いの勝利なんです。荒川の同志には、なんとしても民衆の凱歌の調べを轟かせてほしいね。
私と共に戦い、私が魂を注いで築き上げた広宣流布の模範の天地だもの」
同乗していた幹部が、伸一に尋ねた。
「先生は、昭和三十二年の夏季ブロック指導で荒川区を担当し、わずか一週間で区の会員世帯の一割を超える二百数十世帯の弘教を成し遂げられました。
その戦いの原動力は、なんだったんでしょうか」