小説「新・人間革命」 奮迅 29 2013年6月6日

二月十八日、希望の春を呼ぶ二月度本部幹部会が、東京・立川文化会館で晴れやかに開催された。
 「支部制」が敷かれて一カ月――各地で任命式を兼ねた支部長会が開かれ、さらに支部結成大会が活発に行われてきた。
 「支部制」が本格的にスタートして以来、初めての本部幹部会であり、参加者は支部の建設に全力投球し、歓喜をみなぎらせて集って来たのである。
 この幹部会の焦点は、支部長・婦人部長の活動報告であった。
 なかでも会場を沸かせたのは、支部婦人部長を代表して登壇した、東京・目黒区の向原支部婦人部長・西峯富美の活動報告であった。
 彼女は、夫と共に、仕出し弁当店を切り盛りする勤労婦人である。
 平日は毎朝、午前五時には起きて勤行し、仕出し弁当の仕込みや準備にあたってきた。弁当の注文が多ければ、起床は、さらに早まる。
 仕込みのあと、朝食をとり、三人の子どもを学校へ送り出す。
 午前九時、パートの人たちが出勤してくると、一緒に、正午過ぎまで弁当詰めなどの作業にあたる。
 急いで昼食を済ませ、それから学会活動に飛び出す。婦人部員への激励・指導や諸会合に、全力を傾ける。
 午後三時に店に戻り、弁当箱を洗い、清掃し、夕食の支度に取りかかる。
 そして、午後七時前から、再び学会活動に走り回る。
 毎日が、目の回るような忙しさである。
 しかし、そのなかで西峯は、支部婦人部長として、支部中の人たちを幸せにするのだと、新たな決意で立ち上がったのである。
 創価学会の強さ、尊さは、自らが病苦や経済苦などの悩みをかかえ、時間的にも多忙な人びとが、広宣流布の使命に目覚め、友の幸せのために献身していることにある。
 資産があり、生活に余裕のある有閑階級による救済活動ではない。
 無名の民衆による同苦と励ましの、心の救済活動である。