小説「新・人間革命」 奮迅 43 2013年6月24日

広宣流布は、新しき挑戦の旅路である。
 挑戦には忍耐が必要である。
 フランスの文豪バルザックは、「偉大な仕事を生み出す根源の力である忍耐」(注)と記している。
 山本伸一は、創価学会の後継者たる青年部員には、労苦に耐え、自身を磨き抜く、「能忍」の人に、真実の勇者に育ってほしかったのである。
 もし、青年たちが、本当の苦労を知らぬまま、指導者になってしまえば、民衆の心から離れた創価学会になってしまう。そうなれば学会は行き詰まり、民衆の救済という広宣流布の使命を果たしていくことはできない。ゆえに、創価の後継者として立つためには、勇んで苦労を引き受け、耐え忍んでいくことが大切になるのだ。
 苦労を避けよう。少しでも楽をしようという考え、行動が習性化してしまうと、挑戦への勇気が失われ、前進も、向上も、成長もなくなってしまう。そこから発するのは、保身の腐臭である。すると、周囲の信頼も、尊敬も失われ、人は離れていく。
 青年時代に皆の大きな期待を担いながら、大成せずに終わった人を、伸一は何人も見てきた。そうした人たちに共通しているのは、自分は汗を流さずに人にやらせるなど、苦労を避けて通ろうという姿勢であった。
 また、青年たちのなかには、健康で、経済面などにも恵まれ、整った環境で、苦労を知らずに育った人もいよう。
 そうであるならば、学会活動の世界で、自ら率先して厳しい課題に挑戦し、苦労を重ねながら、自分を磨いていくことである。
 特に、折伏・弘教、指導・激励に心血を注ぎ、友のために涙し、懸命に戦いの歴史をつくることが大事である。
 たとえば、病苦の友に信心を教え、励まし抜き、病克服の体験を目の当たりにすれば、自らが病を乗り越えたに等しい喜びと、信心への確信を得ることができる。人間関係や経済的な悩みをもつ友についても同様である。
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■引用文献
 注 「田舎医者」(『バルザック全集 第四巻』所収)新庄嘉章・平岡篤頼訳、東京創元社