若芽4  2013年 10月24日

入学式のメッセージで山本伸一は、児童と保護者らに、心からの祝福を述べたあと、『イソップ物語』の「塩を運ぶロバ」の話を紹介した。
──塩を背に積んで運んでいたロバが、川を渡る途中で、滑って転んでしまう。塩は水に溶け、背の荷物が軽くなった。
喜んだロバは、今度は、綿を運んでいる時に、また身軽になろうと、わざと川で転ぶ。すると、綿に水が染み込んで重くなり、溺れてしまう。
この話から伸一は、怠けて、楽をしようとすれば、最後には自分が損をしてしまうことを述べ、こう訴えた。
「皆さん方もこれから、苦しいこと、辛いこと、重荷に思えるようなことがあるかもしれません。
先生に叱られたり、勉強が思うように進まなくて悲しくなる時もあります。
友だちとケンカして、悔しくて悔しくてしょうがない時も、きっとあるでしょう。
しかし、それらのことは、全部、皆さんが大きな人間に成長していくための荷物といえましょう。
冬の次には必ず春がくるように、悲しいことのあとには、必ず楽しいこと、嬉しいことがやってきます。
竹は、どんなに大雪がつもっても、決して折れない。じっとしんぼうし
て、希望の春を待ちます。
だからといって、なんでも一人でがまんしていなさいというのではありません。
両親と話し合うのもよい。先生や仲のよい友だちに相談するのもよいでしょう。
皆さんは、これから伸びゆく若竹です。
心を大きく開いて、体をきたえ、心をきたえ、竹のようにしなやかで、ねばり強いがんばりを身につけていっていただきたい」
児童たちの目は、キラキラと輝いていた。
伸一は、まず子どもたちに、困難に挑むという、人としての最も大切な生き方を教えておきたかったのである。
困難を避ける生き方が身についてしまえば、最終的に、子ども自身が不幸になってしまうからだ。