若芽3 2013年 10月23日

入学式は、「ちかいのことば」の発表となった。三年生の代表が壇上に上り、演台を前にして立つ校長に向かった。
場内は静まり返った。会場中の目が、心配そうに児童に注がれた。
「待ちに待ったぼくたちの入学式……」
元気な声が響いた。物おじすることなく、堂々としていた。
「今日からは創価小学校の子。学園のおにいさんやおねえさんに負けないよう、ぼくたちはがんばります。
まっ白いできたての校舎、すばらしい教室、ランチルーム、みんな、早くおいでとぼくたちを呼んでいるようです。
こんなりっぱな学校にかよえるのもお父さん、お母さんのおかげです。お父さん、お母さん、ありがとうございます」
保護者席で、目を潤ませる父母もいた。
幼いながらも、親への感謝を語る児童代表の言葉には、心の気高さが感じられた。
「恩を知る心以上に高貴なものはない」(注)とは、哲人セネカの言葉である。
「ちかいのことば」は続いた。
「そして、だれよりも喜んでくださっている山本先生、本当にありがとうございました。
先生は、ぼくたちの未来のために、根っこになろうとおっしゃいました。
先生! ぼくたちは必ず未来の使者として、二十一世紀に思いっきりがんばります。
そのためにも、今日からは小学校のモットー、明るい子、思いやりのある子、ねばり強い子になることをちかいます」
講堂に大きな拍手が起こり、いつまでも鳴り止まなかった。
ここで学園の理事の一人が、創立者山本伸一のメッセージを読み上げた。
このメッセージは、印刷して新入生全員に配られており、漢字には、振り仮名が振ってあった。
児童たちは、その声を聴きながら、印刷されたメッセージを、一文字一文字、目で追っていった。
 
■引用文献
 注 セネカ著『道徳書簡集』茂手木元蔵訳、東海大学出版会