若芽2 2013年 10月22日

東京創価小学校は、創価中学・高校に隣接して建てられていた。春の陽光に照らされた、
鉄筋コンクリート造り三階建ての白亜の校舎が、武蔵野の緑の中に、ひときわ輝きを放って見えた。
校舎三階のバルコニーには、「にゅうがくおめでとう さあ、きぼうのしゅっぱつ!」と書かれた、三十メートルほどの横幕が掲げられていた。
創価小学校の入学式は、午前十一時から、創価学園の講堂で挙行された。
児童たちが、幾分、緊張した顔で壇上を見つめるなか、開式が宣言された。
初めに校長の新木高志が、一年生百二十五人、二年生八十二人、三年生八十四人の入学許可を告げたあと、「明るい子」「思いやりのある子」「ねばり強い子」という低学年のモットーを紹介した。
このモットーは、創立者山本伸一が、設立の準備にあたってきた教職員に請われ、決めたものであった。
彼は、人間教育を行ううえで重視すべきは、精神の育成であると考え、心、生き方という内面に焦点を当てたモットーにしたのである。
「明るい子」、すなわち明朗快活な子どもとは、自分を卑下したりすることなく、広く大きな、素直な心で、何事にも前向きに取り組んでいける子どもである。
「思いやりのある子」とは、他者を大切にする心をもつ子どもである。
いかに学業成績が優秀であっても、自分のことしか考えぬ人間になってしまえば、本人も、周囲の人も不幸である。
思いやりの心を育んでいくことは、人格をつくるうえで、最も大切な要件となる。
「ねばり強い子」をめざすのは、忍耐なくしては、物事の成就も、人間としての大成もないからだ。
子どもが人生を勝利していくために、身につけておかねばならない必須の力といってよい。
 伸一は、未来に伸びゆく子どもたちの、健全な精神の土台をつくることこそが、児童教育の最大の眼目であると確信していたのだ。