若芽 8 2013年 10月29日

入学式前日の八日、山本伸一は校長の新木高志に案内され、東京創価小学校の校内を視察した。
新木は、一九一五年(大正四年)、埼玉県の農家に生まれ、県立青年学校教員養成所に学び、満州(現在の中国東北部)の青年学校などで教壇に立った。
戦後、埼玉県の公立中学校の教員になり、小・中学校の教頭、小学校の校長を歴任している。
彼は、児童・生徒の学力を伸ばすだけでなく、価値を創造する教育の実践を心がけ、将来にわたって幸福を築いていける教育の在り方を探究してきた。
また、親の子どもへの接し方についても研究を重ね、その適切なアドバイスは、多くの親から高い評価を得ていた。
校長時代には、児童が学年を超えて一緒に給食を食べ、そこに、校長も教員も加わるようにした。
児童と教員の心が通い合う環境づくりをとの工夫であった。こうした成果が認められ、学校給食の優秀校として、文部大臣賞を受賞したこともあった。
新木は、定年退職後、地元の公民館の館長を務めていたが、その豊かな教員経験を生かしてもらいたいと、東京創価小学校の校長に迎えられたのである。
伸一は、新木校長と校内を視察しながら、心から御礼を述べた。
創価小学校のためにご尽力いただき、本当にありがとうございます。定年後に、ご苦労をおかけすることになり、胸が痛みます。
お体には、くれぐれも気をつけてください」
伸一が言うと、新木は答えた。
「人生の総仕上げの時代に入って、山本先生が最後の事業と考えられている教育事業に参画させていただけるなんて、夢のようです。
これほど嬉しいことはありません。最高の大使命を授かりました。心から感謝申し上げます。
微力ではありますが、大切な、大切な児童のために、生涯を捧げてまいります」
感謝の心から歓喜が湧く。歓喜は意欲と活力と創造の源となる。ゆえに、人生の勝利もまた、感謝から生まれるのである。
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