若芽 9 2013年 10月30日

山本伸一と校長の新木高志らが、東京創価小学校の正面玄関前に来ると、教頭の木藤優をはじめ、萩野悦正など、十人ほどの教員が出迎えてくれた。
木藤も、萩野も、学会の教育部員として、人間教育の実現のために奮闘してきたメンバーであった。
教員たちの元気な声が響いた。
「先生! ありがとうございます」
「こちらこそ、お世話になります」
伸一は、教員たちと握手を交わした。
出迎えた人たちのなかに、制服を着た何人かの児童の姿もあった。
「入学前なのに、どうして来ているの?
そうか。入学が楽しみで、待ちきれずに、見学に来たんだね。
せっかく来たんだから、みんなで一緒に、校舎を見学しようよ」
伸一は、こう言うと、校長に案内を頼んだ。
保健室を過ぎ、いちばん手前にあった一年一組の教室に入った。
「机も、椅子も、黒板も、新しくて気持ちがいいね。これならば勉強も進みそうだね。座ってみようよ」
彼は、児童用の小さな椅子に腰掛けた。児童も、教師も座った。
伸一は、周囲を見渡し、メガネの似合う青年教師に声をかけた。西中忠義である。
「西中先生! 今日は、児童も来ていますから、授業をしてください」
西中は、創価女子中学・高校(現在の関西創価中学・高校)の社会科の教員として勤務していた。
小学校の教員免許も持っており、東京創価小学校新設にあたって、教員として転勤して来たのであった。
突然、伸一に言われた西中は、黒板の前に立ったものの、戸惑いを隠せなかった。
生きた人間を相手にするのが教育である。
決してマニュアル(手引書)通りにいくものではない。むしろ、予期せぬ事態の連続といってよい。それにどう対処していくかが、教師としての大事な能力といえよう。
伸一は、教師には、その対応力を身につけてほしかったのである。