若芽 15 2013年 11月6日

山本伸一は、日本の小学校教育の現状を考えれば考えるほど、創価小学校を開校して模範の教育を行い、進むべき教育の道を示さねばならないと痛感してきた。
創価女子中学・高校が開校した一九七三年(昭和四十八年)の五月、国際教育到達度評価学会(IEA)が主催した「国際理科テスト」の結果が発表されている。
日本は、小学校(参加十六カ国)、中学校(同十八カ国)ともに、スウェーデンアメリカ、イギリスなどを凌ぎ、トップの成績であった。
しかし、もろ手を挙げて誇れる状況では決してなかった。当時、「知育偏重」「詰め込み教育」などの指摘が繰り返されていたように、人間教育は忘れ去られていたからである。
学歴偏重から、国立や有名私立大学の付属中学校、中高一貫の有名校への受験が過熱化し、進学塾通いや模擬テストに追われる小学生が少なくなかった。
その学習は、ともすれば暗記中心の詰め込み主義となっていた。しかし、学校の授業だけでは志望校への合格は難しいことから、それが歓迎されていたのだ。
さらに、学校教育でも、学習内容は次第に盛りだくさんになり、一方で、授業についていけない児童も増えていたのである。
また、都市開発などによって、遊び場は失われ、皆で遊ぶ子どもたちの姿は、ほとんど見られなくなっていた。
児童の体格はよくなっているにもかかわらず、体力・運動能力は停滞の傾向にあり、さらに、虫歯や喘息なども増加していたのだ。
学齢期にあたる小学生は、学校生活や交友関係のなかで、社会への適応力を培っていくとともに、知的興味も増し、思考力も一段と発達する年代である。
また、体力的にも基礎をつくる大切な時期といってよい。
過熱化する受験競争のなかで、知育ばかりが重視され、徳育、体育はなおざりにされていたのだ。それによって教育は、大きな綻びを見せ始めていたのである。
教育の根本には、人間をいかにとらえるかという、正しい人間観がなければならない。