若芽 41 2013年 12月7日

東京創価小学校では、担任の若江幸恵が、授業の最初に、久藤智代が義足を使っていることをクラスの皆に説明した。
そのことで、からかわれたりすることのないようにとの配慮であった。
一九七九年(昭和五十四年)秋に、山本伸一が小学校を訪れた時、若江は、久藤を伸一に引き合わせた。
伸一も、足の不自由な児童がいることを聞いており、会いたいと思っていたのだ。
久藤には、どこまでも強く生きていってほしかった。
人生には、辛いこと、悲しいこと、苦しいことはたくさんある。
また、皆が善意の人とは限らない。むしろ、人の心を平気で傷つけたり、蔑んだりする人がいかに多いことか。
だから、何があっても負けない「強い心」をもつことが、幸せの要件となるのだ。
伸一は、久藤に語った。
「足が不自由で、「辛いな」と思うこともあるかもしれないが、それを乗り越えていった時には、誰よりも「強い心」「輝く心」がもてるようになるんだよ。
あなたは、ヘレン・ケラーという人を知っているかい。
目も見えない、耳も聞こえない、話すこともできないという三つの苦しみを乗り越えて、人びとに大きな希望と勇気を与えた女性だよ。
サリバンという先生の教えを受けて、字を覚え、勉強し、アメリカで最優秀の女子大学で学んだんです。
そして、世界各国を回って講演するとともに、体の不自由な人などのために、社会福祉事業に貢献したんだよ。
ヘレン・ケラーは、自分の運命を、人びとのために尽くしていく力に変えていったんです。そこに彼女のすばらしさがある。
あなたも、しっかり勉強して、ヘレン・ケラーのような人になるんだよ」
伸一の言葉は、久藤の胸に深く染みた。
めざすべき模範と理想がある人は強い。その人の心には、逆境の暗夜にあっても、希望の光が差し、勇気の火が燃えているからだ。