若芽 50 2013年 12月19日

 
山本伸一は、皆で声を合わせて行進しながら、見学に来ていた子どもたちに、次々と言葉をかけていった。
「みんなも、おいでよ」
一緒に歩く子どもの数は増え、四、五十人に膨らんだ。伸一と他校の子どもたちの行進に、創価小学校の児童から拍手が起こった。
伸一は頷いた。
「これが大事だ」と思った。
他校の児童のなかには、創価小学校に入学したかったが、選考でもれてしまった子どももいるかもしれない。
あるいは、創小生になった弟や妹を、羨望の思いで見ている子どももいるにちがいない。
「創小生は、そうした人たちの心を汲み、その人たちの分まで頑張れる人になってもらいたい」というのが、伸一の願いでもあった。
彼は、一緒に歩いている子どもたちに、声をかけた。
「親孝行して、勉強もしっかり頑張って、人間として、偉い人になるんだよ」
また、幼児には、「みんな、この学校においでよ。待っているよ」と語りかけた。
運動会はフィナーレとなり、全校児童による演技「開校のよろこび」が始まった。
学校建設の歩みを語るナレーションに合わせ、グラウンドいっぱいにマスゲームが繰り広げられた。
伸一は、演技を見ながら、子どもたちの成長に目を細め、教師に言った。
「立派です。しかし、少し出来すぎのようにも思います。
子どもたちが一生懸命に頑張るのはすばらしいことですが、型にはめて高い完成度を求める必要はありません。
のびのびと、自由な雰囲気のなかで育てることです。
もっと肩の力を抜き、力みすぎないようにすることも大事なんです。
育むべき根本は、自主的、主体的な意欲です。美しい盆栽を育てるのではなく、大自然のなかで大地に深く根を張り、天に伸びる、堂々たる大樹を育てようではありませんか」