若芽 54 2013年 12月24日

 
山本伸一は、校長の新木高志や児童らとグラウンドへ向かった。
伸一の周りに集まった児童たちは、歓声をあげて彼にしがみついてきた。
「わかった、わかった! みんな、私を待っていてくれたんだね。では、相撲を取ろう」
「ワァー」と、声があがった。
伸一は、一年生の児童と相撲を取った。すると、皆が突進してくる。彼の新しい背広が、もみくちゃになってしまった。
「降参、降参! 今日は、みんなで記念撮影をして終わりにしよう」
新木校長が、恐縮しながら言った。
「先生。子どもたちが非礼な振る舞いをして、申し訳ありません」
「いいんです。まず、元気で率直であることが大事です。自分の思いを体で表現し、ぶつかってくる。
子どもらしいではないですか。ましてや、私は創立者です。みんなの父親
であると思っています。
私と創小生との間には、垣根も、敷居もないんです。
率直に、のびのびと、自由に自己表現できるようにしたうえで、礼儀を教えていけばいいではありませんか。
人前に出ると緊張し、借りてきた猫のようになってしまうのでは、堂々たるリーダーには育ちません」
全校児童がグラウンドに集まり、伸一と一緒に記念のカメラに納まった。
「みんなが元気で嬉しい。また、お会いしましょう」
こう言って伸一は、校舎に入り、保健室をのぞいた。休んでいる児童は誰もいなかった。
彼は、校長らに語った。
「保健室に来た子どもには、こまやかな注意を払ってください。たとえば、頭痛を訴える児童がいたとします。
風邪や睡眠不足などによることもあれば、精神的なストレスによる場合もあります。
また、大きな病の初期症状ということもあるでしょう。
先入観で「大したことはないだろう」と考えるのではなく、さまざまな事態を考慮しての対応が大事です。それが、児童を守ることにつながります」