若芽 56 2013年 12月26日

 
「児童祭」では、一年生のオペレッタ(歌劇)、二年生のリズムダンス、三年生の演劇などが披露された。
山本伸一は、児童の熱演と成長に目を細め、心から拍手を送った。
あいさつに立った彼は、こう語り始めた。
創価小学校で学んだ人のなかから、人類を救っていくであろう指導者がたくさん出ると、私は信じております。
その意味から、今は、わかっても、わからなくてもいいので、人の生き方について、お話しします」
彼は、『イソップ物語』に出てくる「ロバを担いだ親子」の話をした。
 ──市場にロバを売りに行くため、親子がロバを引いて歩いていると、村の娘たちが、「ロバに乗っていけばいいのに」と笑った。
それを聞いて、父親は、子どもをロバに乗せて歩き始める。
すると、やって来た父親の友だちに、「子どもを甘やかしてはいけない」と注意される。
父親は子どもを歩かせ、自分がロバに乗る。
しばらく行くと、若い女性から、「自分は楽をして、小さい子どもを歩かせるなんて、ひどい父親だ」と非難される。
親子は、二人でロバに乗る。
さらに、教会の前で牧師から、「ひどい親子だ。ロバが疲れて弱っているじゃないか」と言われる。紛動されやすい親子は、どうしていいかわからない。
牧師が「ロバを担いであげなさい」と言うので、ロバの足を棒にくくりつけ、担いで歩き始める。
しかし、橋を渡る途中、逆さにつるされたロバは苦しくて暴れだし、川に落ちて流されてしまうのだ。
伸一は、周囲の無責任な声に振り回されることの、愚かさを伝えたかったのである。
民衆の幸福のために立ち上がれば、誤解や嫉妬から、非難や中傷を浴びるものだ。
その時に、紛動されることなく、信念に生き抜いてこそ、人間の正義は貫かれることを知ってほしかった。
日蓮大聖人は、信念に生きる至高の人間の生き方を、こう表現されている。
「師子王は百獣にをぢず・師子の子・又かくのごとし」(御書一一九〇p)