【第20回】 アジアの「平和の太陽」に! (2013.12.1)

あと、ひと月で新しい一年だね。
 今年は、みんなにとって、どんな一年だったかな。もし漢字一字で表すと、どんな字になりますか?
 「喜(よろこぶ)「明(あかるい)」「挑(いどむ)」「勝(かつ)」「学(まなぶ)」「読(よむ)」「進(すすむ)」「友」「光」……こんな字が並ぶといいね。
 毎年12月12日は、「1212」の数字が「いい字一字」と読めることから、「漢字の日」といわれています。
 「漢字は、にがてだなあ」と思う人もいるかもしれません。でも、漢字には3000年以上の歴史があり、世界でたくさんの人に使われてきた、人類の貴重な文化です。
 一つ一つのなり立ちにも意味があって、たとえば「学」の字は、校舎やその屋根を意味する「(学の字上半分)」の下に「子」、つまり「教えを受ける人」がいることを表しているといわれています。一生けんめい、勉強しているみなさんの姿そのものです。
 たった一文字でも正確に意味を伝える便利な漢字は、もともと、おとなりの中国で作られた文字でした。
 日本は、大むかしから中国の文明に大きな影響を受けて、発展してきました。お米や豆腐、紙や印刷、はし、ふとん、鏡……来年は「うま年」などという「えと」も、中岡から伝わったものです。
 釈尊がインドで説いた「仏教」も、中国から、韓・朝鮮半島を通《とお》って、日本へと伝わってきました。
 日本はアジアの一員として、中国や韓国といった他のアジアの国々から、はかり知れない恩を受けてきたのです。
    * * *
 しかし、戦争は、長くおつきあいをしてきた国との間も引きさき、どちらの民衆も傷つけ苦しめてしまいます。
 私が子どものころ、父と一番上の兄から、くり返し開かされた話があります。
 かつて父は兵隊にとられ、現在の韓国の首都ソウルで2年間、すごしたことがありました。また、一番上の兄も、兵士として中国に渡りました。
 父と兄は、日本との争いでアジアの人々が苦しんでいることに心を痛めていました。二人とも「同じ人間同士じやないか。こんなことは、絶対に間違っている」と、私に教えてくれたのです。
 二人が語った平和への願いが、今も私の心に深くきざまれています。
 「アジアの平和と繁栄」は、師匠である戸田城聖先生の悲願でもありました。
  雲の井に
   月こそ見んと
      願いてし
  アジアの民に
    日をぞ送らん
 このお歌は、「雲のもれ間に、ほのかな幸の月光を見ようと願うアジアの民衆に、それよりもはるかに明るく、まばゆい太陽の光を送りたい」という意味です。
 戸田先生は、戦争や侵略で苦しんできたアジアの友の幸福を願い続けていました。
 師の心を胸に、私は韓国、中国、フィリピン、マレーシア、シンガポール、タイ、カンボジアミャンマー、ネパール、インド、スリランカなど、アジアの国々を訪れ、永遠の平和と友好の道を切り開いてきたのです。
 タイのプーミポン国王、インドのナラヤナン大統領やラジブ・ガンジー首相、インドネシアのワヒド大統領ら多くのリーダーたちとも、未来をになう青少年たちとも、大いに語り合ってきました。
 平和といっても、遠くにあるのではない。一人また一人と心を開いて語り合い、友情を結ぶことから、平和は生まれます。
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 1968年、私は1万数千人の学生たちを前にして、日本と中国が仲良く友好を結んでいくように提言しました。
 そのことで、たくさん悪口も言われました。命をねらわれることさえありました。
 しかし、私は戸田先生の弟子です。何も恐れません。アジアと世界の平和のために、勇気をもって信念の行動をつらぬき通しました。
 4年後の1972年、日本と中国は「友好の扉」を開き、目中両国の国交の正常化が実現しました。
 中国の「人民の父」と人々にしたわれた周恩来総理とお会いしたのは、1974年12月、寒い寒い北京でした。重い病気で入院されていた周総理が、私たちを信頼して、わざわざ病院に呼んでくださったのです。
 両国の平和友好の末来を託されようとする総理の深い心を、私は感じ取りました。
 翌年の春には、中国から日本へ初となる正式な留学生6人を、わが創価大学が受け入れました。みな最優秀の青年たちで、真剣に勉強に励み、努力を重ねました。
 今年の10月、そのうちの一人の女性が、わが創価犬学で講演してくださいました。ほんやく家としても立派に活躍されている方です。
 「創人生と手をたずさえ、中日友好の道を、いっそう広げていきたい」と後輩の学生たちに呼びかけてくださり、創立者として、これ以上うれしいことはありません。
    * * *
 100年、1000年という長い単位で人類の歴史を研究されてきた博士は、若い私に、対話の波を、アジアに、そして世界に広げゆくことを期待されたのです。
 日蓮大聖人は「鏡に向かって礼拝する時、そこにうつる影(姿)がまた自分を礼拝するのです」(御書769㌻、意味)と仰せです。人を尊敬する人が、人から尊敬されます。他の国を尊敬する国が、世界から尊敬され、平和を築くことができるのです。
 父や兄、さらに戸田先生の願いを受けつぎ、私はアジアの国々と誠実第一に友情を結んできました。これからアジアの、そして世界の「平和の道」を21世紀に創りゆくのは、みなさん方です。みなさん一人一人が、アジアの「平和の太陽」であり、世界で友情のドラマをくり広げゆく主役です。
 「光」という漢字は、頭上に火をもつ人の姿をしめしたものといわれます。
 みなさんは、どうか、心のなかに「勇気の火」「正義の火」「友情の火」を燃やしながら、元気いっぱいに、生き生きとかがやいて、まわりに希望の光を送る人に成長していってください。
 年末になると、特に世の中が忙しくなります。無事故第一で、そして健康第一で、お願いします。
 今年の目標に最後まで挑戦して、楽しいお正月をむかえてください。
 また来年、お会いしましょう!