小説「新・人間革命」 激闘27

激闘27

 山本伸一は、次のように話を結んだ。
 「いかなる試練があろうとも、そのなかで苦労を重ね、同志を守り、仏道修行に励み抜いた人は、最後は必ず勝ちます。試練というのは、自分を磨(みが)き抜き、大きく飛躍していくためのものなんです。
 皆さんは、何があっても一喜一憂(いっきいちゆう)することなく、”今に見よ!”との一念で、一生成仏の坂道を勇敢に上り抜いていってください」

 伸一が、最後に、こう語ったのは、実は3、4年前に、練馬の北町方面で組織が攪乱(かくらん)されるという出来事があったからである。
 ──御本尊に不信をいだき、陰で学会批判を繰り返す総ブロック(現在の支部)幹部がいた。問題が表面化した時には、信心を惑わされた数世帯の会員が離反。しかも、離反者たちは、人間関係を使って、組織を越え、さらに脱会の誘いをかけていたのだ。
 状況の把握(はあく)の遅れや、多くの幹部が”何かおかしい”と感じながら、踏み込んだ指導をできずにきたことが、混乱を大きくする一因となった。

 事態を知った学会本部では、副会長の関久男をはじめ、教学部や婦人部の幹部を派遣した。彼らは、徹底して個人指導を重ねるとともに、一致団結して、弘教の大波を起こしていこうと訴えていった。

 その激励・指導に応え、北町方面の各総ブロックは、「今こそ、変毒為薬(へんどくいやく)の時だ!」と、皆が立ち上がり、果敢(かかん)に弘教を展開した。
 そして、見事に組織は蘇生(そせい)し、この1978年(昭和53年)、支部制のスタートとともに、いよいよ誇らかに、希望の前進が開始されたのだ。

 奮闘の一部始終を聞いていた伸一は、この勤行会で、北町方面のメンバーのために、試練の意味について、あえて言及したのである。
 中国の人民の母・トウ穎超(とうえいちょう)は語っている。
 「闘争を乗り越えてこそ、心も、体も鍛えられる。また、悪いことも良いほうに変えていける。だから私は、苦難を受けているあなたに”おめでとう!”と言います」

(2014年 4月22日付 聖教新聞