小説「新・人間革命」 激闘33


 山本伸一の十軍についての説明に、研修会参加者は目を輝かせて聴き入っていた。
 「第五の『睡眠』は、睡魔のことです。
 たとえば”唱題しよう””御書を学ぼう”とすると、眠気が襲ってくるという方もいると思います。釈尊も、悟りを得るまでのなかで、この睡魔と懸命に戦っています。

 睡魔に襲われないようにするには、規則正しい生活を確立し、十分な睡眠を心がけることです。さらに、熟睡できるように工夫することも大切です。寝不足であれば、眠くなって当然です。また、眠気を感じたら、冷水で顔を洗うなどの工夫も必要でしょう。

 第六の『怖畏(ふい)』は、恐れることです。
 信心することによって、周囲の人から奇異な目で見られたり、仲間はずれにされるかもしれない。時には、牧口先生のように、迫害され、命に及ぶこともあるかもしれない。
 そうなることを恐れ、学会から離れたり、信心を後退させてしまうことが、これにあたります。結局、臆病(おくびょう)なんです。

 大聖人は『日蓮が弟子等は臆病にては叶うべからず』(御書1282ページ)と仰せです。 信心を磨き、一生成仏していくための要諦(ようてい)は、勇気をもつことなんです。入会するにも勇気です。折伏するにも勇気です。宿命に立ち向かうにも勇気です。信心とは、勇気なんです」
 彼は、参加者一人ひとりに視線を注いだ。どの顔にも決意が光っていた。

 「第七の『疑悔(ぎけ)』は、疑いや後悔(こうかい)です。せっかく信心することができたのに、御本尊を疑い、学会を疑い、難が競(きそ)い起これば、”信心などしなければよかった”と悔(く)やむ。その暗い、じめじめとした心を打ち破るには、すっきりと腹を決めることです。そこに、歓喜が、大功徳があるんです。

 第八の『瞋恚(しんに)』は、怒りの心です。『折伏をしましょう』と指導されると、”よけいなお世話だ”と憤(いか)り、怨嫉(しっと)してしまう。また、学会の先輩が、本人のためを思い、御書に照らして信心の誤(あやま)りを指摘すると、腹を立て、恨(うら)む。そうした心の作用です」

(2014年 4月29日付 聖教新聞