激闘54  2014年5月24日

山本伸一の声は次第に熱を帯びていった。
「個人指導によって、相手の方が奮起した場合でも、その後、どうなったのか”“悩みは克服できたのかと心を砕き、電話でも、手紙でもよいから、連絡を取って、激励していくことです。
幹部になった。張り切って会員宅を訪れ、個人指導した。
しかし、一度だけで終わりというのでは、途中で放り出してしまったようなものです。
第五に、抜苦与楽の精神こそ、個人指導の大目的であることを忘れないでください。
皆、さまざまな悩みをかかえて、苦しんだ末に、指導を受ける。
したがって、指導する限りは、その悩み、苦しみが、少なくなるように励ましていくことが肝要です。
一例をあげれば、ご主人が信心しないことで悩んでいる夫人がいたとします。その時には、まず、こう言うことです。
『大丈夫ですよ。長い人生なんですから、焦ることはありません。ご主人も、尊い使命をもって生まれているんです。
夫を思う妻の祈りは必ず通じますよ』そうすれば、安心できます。
それから具体的な対応について語っていけばいいんです」
個人指導には、人を大事にする心、相手への深い思いやりが不可欠である。
その心が、さまざまな気遣いとなり、配慮と励ましの言葉となって表れるのである。
伸一は、青年時代、よく自分のアパートに男子部員を招いて、激励した。
時には、食事を振る舞ったり、共にベートーベンなどのレコードを聴いて、励ましたこともあった。
さらに、文京支部はもとより、札幌、大阪、山口、夕張など、どこへ行っても、徹して個人指導に努めた。
父親のつくった借金を返済しながら、両親と小さな弟、妹の生活を支える青年もいた。
本人も妻も病身で、乳飲み子を抱え、失業中の壮年もいた。
皆、過酷な現実と向き合い、必死に生きようとしていた。
そうした同志に、希望の光を注ぎ、仏として輝かせていくための聖業が個人指導である。