求道6  2014年6月19日

競技に出場した斉間恵は、全力疾走して、コースに置かれていた紙を取った。
「山本室長に割烹着を着せて、姉さん被りをさせ、ホウキ、ハタキを持たせる」と書かれていた。
さらに走ると、さまざまな衣服や用具が置かれていた。斉間は、指定された衣服と用具を探し出し、それを持って幹部のいるテントに急いだ。
ところが、伸一の姿はなかった。
「どうしよう……」
中央に、会長の戸田城聖が座っていた。
「あのー、山本室長は、どこにいらっしゃるか、ご存じありませんか!」
思わず戸田に尋ねていた。
彼は、柔和な笑いを浮かべて答えた。
「この後ろにおるよ」
戸田が指さした紅白幕の後ろに行くと、伸一は役員の青年たちと、賞品を分けていた。
斉間は、叫ぶように言った。
「室長。これを着て走ってください! 早く、早く!」
「わかった。大丈夫だよ」
落ち着き払った伸一に、焦りを感じながら、割烹着を着せ、姉さん被りをさせた。
伸一は、「さあ、行くよ!」と、笑みを浮かべて言い、走りだした。快足であった。なんと、一等でゴールしたのだ。賞品をもらうためにテントの前に並ぶと、彼は言った。
「申し訳ないが、私は戻ります。あなたは、どこからいらしたの? お名前は?」
斉間が、仙台から来たことを告げ、名前を言うと、「あなたのことは覚えておきます。東北の広宣流布のために、しっかり頑張ってください」と励ましてくれた。
彼女は、学会の本流に触れ、何かを吸収しようと、翌年の体育大会にも、戸田が「原水爆禁止宣言」を発表した翌々年の体育大会にも、喜び勇んで参加した。
草木が地中の養分を懸命に吸い上げて生長するように、求道の熱意は信心の大いなる成長を促す。求道あるところに、勝利もある。
そして斉間は、成長の年輪を刻み、東北女子部の中核へと育っていくのである。