求道35  2014年7月24日

山本伸一は、郡山会館の窓辺に立った。
「よくできた庭園ですね。ご主人の真心が胸に染み渡ります。ご主人と、この庭を見ながら、ゆっくりと語り合いたかった……。
ところで、この庭に名前はありますか」
根本スエが答えた。
「ございません」
「それならば、『根本庭園』としましょう。私は、学会を愛し、会館を守り抜かれたご主人を、顕彰したいんです」
「ありがとうございます。
主人は、『山本先生が、全国各地に会館を建設される陰には、どんなご苦労があることか』と、よく話しておりました。
そして、『草創期の先輩たちは、会合一つ開くにも会場がなく、個人のお宅で、隣近所に気を使い、神経をすり減らすようにして活動してきた。
それを思うと、今はどんなに恵まれていることか。会館が各地にあることを、決して当然のように思ってはいけない』というのが口癖でした」
「ありがたいお言葉です。涙が出ます」
それから伸一は、峯子と共に管理者室にも足を運び、スエへの激励を重ねた。
「ご主人を亡くされ、なかなか悲しみは拭えないかもしれません。
しかし、強い心で生きることです。人は、愛別離苦という苦しみを避けることはできない。
でも、あなたの心の中に、ご主人は永遠に生き続けます。
そして、そのご主人が、どんな自分を見れば喜んでくれるかを、考えてください。
――嘆き悲しみ、落胆し、涙を拭い続けている自分なのか。
それとも、太陽に向かって顔を上げ、ご主人の分まで、広宣流布に生き抜こうとしている自分なのか。
あなたがめそめそしていれば、ご主人も悲しみます。しかし、悲しみの淵から立ち上がり、満面に笑みを浮かべ、広布に走る時、ご主人は喜びの涙で眼を潤ませるでしょう。
頑張っているな! 偉いぞ!喝采を送るでしょう。それが、ご主人への追善となるんです。強く、強く生きるんですよ」