小説「新・人間革命」広宣譜2 2014年 11月19日

山本伸一は、新学生部歌の歌詞の原案を見ながら思った。
「今、学生部は、人事も一新され、二十一世紀への新出発の時を迎えた。師弟共戦の戦いを起こし、魂のバトンを託す時代が来たのだ。
その祝福と満腔の期待を込めた歌を、私が作って贈るべきではないか…?」
伸一は、先ほど、歌詞を持ってきた学生部の幹部らに、師弟会館に来てもらった。
「学生部は大事だから、今回は、私が歌を作って、諸君に贈ります。みんなのために、後世に残る学生部歌を作ってあげたいんだ。
永遠に歌い継がれる歌を、君たちの時代に残していこうよ。今日中に曲も完成させます。
私は、諸君のために一切をなげうつ覚悟です。未来は君たちに託すしかないもの。
では、口述するから、書き留めてください」
彼は、目を細め、未来を仰ぐかのように彼方を見た。しばらく沈黙が続いた。
そして、一語一語、言葉を紡ぎ始めた。
「『広き曠野に 我等は立てり』──この「こうや」は、「荒れ野」ではなく、「広々とした野原」の方だ。
「こうや」の「こう」の字は、日偏に旧字の「廣」がいい。
「広い」という同じ漢字が重なるのを避けるとともに、荘厳な感じを出したいんだよ。
『広き曠野』と表現することで、学生部の未来は、洋々と開け、舞台は限りなく広いことを強調したいんだ。皆、世界にも羽ばたいてもらいたい。
次は、『万里めざして 白馬も堂々』にしよう。晴れやかな出発だ。これから全地球を、ところ狭しと駆け巡るんだ。
『いざや征かなん 世紀の勇者』──「ゆかなん」の「ゆく」は、「征服する」などという時に使う「征」の字だ。
困難に打ち勝ち、成し遂げるという意味を込めているんだよ。
そして、この『世紀の勇者』とは、二十一世紀を担う大指導者ということなんだよ」
伸一の心には、言葉が次から次へと、泉のようにあふれてくるのである。
必死な励ましの一念は、勇気の言葉を、希望と確信の言語を生み出していく。