小説「新・人間革命」広宣譜3 2014年 11月20日

時刻は、午後四時半を回っていた。
山本伸一は、五時半からは、妻の峯子と共に、新宿文化会館での婦人部首脳の懇談会に出席することになっていた。
彼は、出発時刻ぎりぎりまで、新学生部歌の作詞を続けようと思った。
「さて、四行目だ。ここは、起承転結の結の部分にあたる大事な箇所だ…。
よし、『我と我が友よ 広布に走れ』としよう。自分だけではなく、悩める友の味方となり、強い友情を結び、同志と共に前進していくんだ。
『走れ』ということは、勢いある行動なんです。青年は、座して瞑想にふけっていてはならない。
『広布に走れ』を実行していくには、まずわが人生は、広宣流布とともにありと決めることです。
そして、瞬間瞬間、広布をめざして力の限り、戦い抜いていくんだ。広布に歩けではないんです。全力疾走だ。
『未だ広宣流布せざる間は身命を捨て随力弘通を致す可き事』(御書一六一八㌻)というのが、私たちの精神だもの。
さらに、青春時代の誓いを、終生、貫き通していくことです。
日蓮大聖人は『始より終りまで弥信心をいたすべし・さなくして後悔やあらんずらん』(同一四四〇㌻)と仰せだ。〝持続〟なくして勝利はありません。
皆の人生には、これから先、就職もあれば、結婚もある。さまざまな環境の変化があります。
職場の上司や同僚、家族や親戚から、信心を反対されたり、自分が病に倒れたり、勤めた会社が倒産したりすることもあるかもしれない。
その時に、いよいよ自分の信心が試されているんだ。負けるものか!と、歯を食いしばって頑張り抜いてほしい。どんなに苦しくとも、信義のため、正義のために、使命の走者として、広宣流布の大道を完走してほしいんです。
そのための魂の歌を、師弟の応援歌を、私は今、作っておきます」
伸一は、生命の言葉を紡ぐようにして、歌詞を作り上げていった。