小説「新・人間革命」 広宣譜45 2015年 1月14日

吉原力は、一九六二年(昭和三十七年)、本部の職員に採用された。
以来、山本伸一は、彼が人材として大成していくことを祈りながら、じっと見守り続けてきた。
伸一はこれまで、多くの人を見てきた。残念なことには、幹部となり、未来を嘱望されながら、広宣流布のために生きるのではなく、自分の野心のために学会を利用しようとする人間もいた。
そうした人物には、よく見ると、共通の傾向がある。
それは、仏法で説く生命の因果の理法も、冥の照覧も、確信できずにいることである。
だから、陰の労苦を避け、要領よく立ち回ろうとする。口で言うことと行動も異なり、裏表がある。
しかし、そんな生き方が、仏法の世界で通用するわけがない。まやかしがあれば、いつか必ず、露呈するものだ。
一方、広布を願って行動する人には、陰日なたがない。喜んで皆のために働いていく。
伸一は、吉原の信心と誠実さに期待を寄せ、九州総合長に大抜擢したのである。
九州の代表との協議会で伸一は、白い封筒から一枚の事務用箋を取り出した。
「九州の新しい出発を祝し、『九州の歌』を作りました。車中、皆さんを思いながら作詞し、その後、さらに推敲を重ねたものです」
彼は、歌詞を読み上げていった。
 
 「一、ああ広宣に われら起ち
    火の国健児の スクラム
    今や燃えなん 果しなく
    大九州の 旗高し
  
  二、ああこの汗で 築きたる
    我と君との この城を
    法花で飾れ この歌と
    先駆の九州 いざ楽し
  
  三、ああ九州の ある限り
    崩れぬ道は 幾重にも
    世紀の功徳 いやまして
    正義の歴史 綴らなむ」 
 
同志の瞳が輝き、顔に歓喜の光が差した。