小説「新・人間革命」広宣譜53 2015年1月23日

山本伸一が蛍の舞を眺めていると、「中国の歌」の作曲を担当した壮年たちが、「曲が出来上がりました」と言って、カセットテープとデッキを持ってやって来た。
「待っていたんだよ」
伸一は、蛍が輝く庭で、そのテープを聴いた。そして、歌詞の書かれた原稿用紙を広げた。
彼の周りにいた人が、懐中電灯で歌詞を照らしてくれた。
彼は、曲に合わせて歌を口ずさみながら、赤鉛筆を手にし、歌詞を推敲し始めた。
「一番の最後は、『進みゆかなん 手をば結びて』ではなく、『進み跳ばなん 手と手結びて』にしよう。
中国の皆さんの躍動する心を、表現しておきたいんです」
二、三カ所、手を加え、再度、歌詞を読み返すと、力強い声で言った。
「よし、これで決定だ!」
歌詞の書かれた紙に、赤鉛筆で「決」と認めた。
作曲をした壮年が、伸一に言った。
「先生! 『友は燃え』など、三行目の終わりは、繰り返した方が、音楽的に安定するのですが、そうしてもよろしいでしょうか」
「かまいません。お任せします。
昨日から、作曲で苦労されたでしょう。しかし、その分、曲が練り上げられ、すばらしい曲になってきていますよ。名曲です。ありがとう! あなたの名前も、この歌と共に永遠に残ります。おめでとう!」
学会のリーダーに不可欠なものは、一つ一つの物事の背後にある、人の苦労を知っていくことである。そこから励ましも生まれる。
翌七月二十一日、米子文化会館の前には、早朝から車の列ができていた。
前夜、勤行会が開催されるという知らせが鳥取県内を駆け巡り、全県下から訪れた会員が、開門を待っていたのである。
その様子を見た伸一は、近隣の迷惑になってはならないと思い、皆に会館へ入ってもらうように県幹部に指示した。
「私は、会員の皆さんとお会