小説「新・人間革命」広宣譜60 2015年1月31日

未来会の集いのあと、山本伸一は米子文化会館の館内を回り、本部幹部会の役員や合唱団のメンバーらを激励した。
彼が二階ロビーにいると、未来会のメンバーが集まって来た。
「さっき、会ったばかりだもの、特別な話はありません」
伸一は、こう言ったが、皆、瞳を輝かせ、彼の言葉を待っていた。
それならば、これだけは語っておこうと思い、伸一は口を開いた。
「未来会の皆さんは、両親をはじめ、多くの学会員の希望であり、誇りです。また、皆さんは、未来会の結成に際して、いろいろな決意をされたと伺っています。
人間として最も大事なことは、皆さんに期待を寄せてくれている両親を、未来を君たちに託そうとしている学会員を、自分自身を、決して裏切らないことです。
裏切りは、最大の不知恩です。
それには、青春時代の誓いを、終生、果たし抜いていくことです。
私は、諸君が、その誓いを本当に果たし、決意を実践していくのか、じっと見ています。
口先では、なんとでも言えます。大切なのは、行動です。結果です。
君たちが見事な実証を自ら示すまで、私は励ますことも、讃えることも、褒めることもしません。厳しく見ています。
おだてられ、甘やかされて育てば、人間は強くなれません。力もつきません。ちょっと辛いことや困難に出くわせば、人のせいにして恨み、愚痴や文句を言って逃げ出すような弱い人間には、なってほしくないんです。
強く大きな心のリーダーに育ってほしいんです」
心が弱ければ、困難や苦しみを恐れて、恩義を踏みにじり、裏切りさえも犯しかねない。
正義の人とは、心強き人だ。
伸一は、未来会のメンバーを生命に焼きつけるように、じっと視線を注いだ。
「私は、君たちに大成してほしい。新世紀の大リーダーに育っていってほしい。
だから厳しくしていきます。それが慈悲なんです」
彼は、未来を担い立つ王者を、本当の後継の師子をつくりたかった。