小説「新・人間革命」大道 7 2015年2月18日

七月二十六日午後、山本伸一の乗った「キングロマンス」号は、白い飛沫を上げて、四国研修道場から、瀬戸の島々を縫うようにして小豆島をめざしていた。
彼は、前日、四国の幹部から、小豆島のメンバーの奮闘について報告を受けた。
小豆島では、二度にわたる豪雨禍で多くの死者、負傷者が出ました。
学会員は、そのなかから信心で立ち上がり、地域の柱となって復興に取り組んできました。
また、小豆島会館が開館十周年の佳節を迎えることから、弘教をもって法城を荘厳しようと、勇んで活動に励んでいます」
それを聞いた伸一は、直ちに提案した。
「すごいことだ。皆さんとお会いして、励ましたいね。明日、岡山へ帰る時に、小豆島会館を訪問したいのだが、どうだろうか。
十一年前に、小豆島を初訪問した時、私は、再び訪問することを約束しているんです」
四国長の久米川誠太郎は、ほおを紅潮させ、満面に笑みを浮かべて言った。
「ぜひ、お願いいたします!」
復路も、往路同様、移動時間を短縮するため、高速船「キングロマンス」号をチャーターしていた。
島へは、四国研修道場からは三十分ほどで行けるという。
久米川が現地と連絡を取り、翌二十六日の午後三時から、小豆島会館で開館十周年の記念勤行会を開催することになった。
凜とした声で、伸一が言った。
「苦労し、辛酸をなめてこられた方々を、私は、力の限り励ましたいんです。最大に讃えたいんです。尊い仏子の方々とお会いするためなら、どこへでも行きます」
そして、この訪問が実現したのだ。
自分が足を運び、対話した分だけ、広宣流布の道は開かれ、発心の種子が植えられる。
伸一の乗った船に向かって、海のあちこちで船上から手を振り、歓声をあげる人たちの姿があった。漁業を営む学会員である。
伸一たちも、盛んに窓から手を振って応え、青い海原に真心の交歓風景が広がった。