小説「新・人間革命」大道 26 2015年3月12日

山本伸一は、翌七月二十八日午後一時半、東濃に出発する直前、中部文化会館で、創価大学、東京の創価学園、関西の創価女子学園に学ぶ学生・高等部、卒業生の男女青年部の代表と、記念のカメラに納まった。
夏季休暇を利用し、帰省していた人たちなどであった。中部訪問中の創立者と会いたいと、集まって来たのである。
伸一は、多忙を極めていた。しかし、ひと目でもメンバーと会って、励まし、心を結び合いたかったのだ。
創価大学は、四期までの卒業生を送り出したにすぎず、伝統ある有名校に比べれば、就職も有利とはいえない。
そのなかで皆が、自分こそ創立者なのだとの自覚で、企業などに体当たりするようにして就職の道を開き、職場で実績をあげ、信用を勝ち得つつあった。
伸一は、そうした卒業生たちに、心から感謝するとともに、後に続く創価同窓の鳳雛たちを、全力で励ましたかっ
たのである。
「わざわざ集ってくださって、本当にありがとう。お会いできて嬉しい。
諸君の前途は、必ずしも平坦ではないでしょう。待ち受けているのは、疾風怒濤であるとの覚悟が必要です。
孤独に感じることもあるかもしれない。絶望的な気持ちになることもあるかもしれない。常に、現実は厳しい。矛盾だらけです。大事なのは忍耐です。
そして、何があろうが、今に見よ!と、強く、強く、生き抜いていくんです。
たとえ地に倒れることがあったとしても、再び、三たび、四たびと立ち上がり、挑戦し続けるんです。
負けないことが、勝つことであり、その人が最後の勝利者になります。
今、北京では、日中平和友好条約の締結交渉が行われています。
私は、この締結を悲願とし、提言もしてきました。
また、九月には四度目の中国訪問を予定しています。
私は、人類の未来のために、諸君が世界の檜舞台で自在に乱舞できるよう、全力で道を開いておきます。君たちのことを思うと、力が湧きます。
勇気が出るんです。万事、頼むよ!」