小説「新・人間革命」大道 47 2015年4月6日

第三代会長となった山本伸一は、戸田城聖と仙台の青葉城址に立った日から七年後の一九六一年(昭和三十六年)十一月二十一日、再び、この地を訪問し、一首を詠んだ。
「人材の 城を築けと 決意ます 恩師の去りし 青葉に立つれば」
この時、東北の同志は、人材城建設の誓いを新たにしたのである。
また、伸一は、東北の青森の同志に、青森の「青」とは「青年」を意味し、「森」とは「人材の森」を意味すると訴えてきた。
人材とは、いかなる人物をいうのか──。
社会的に立派な地位や肩書、技能、財力などがあれば人材かというと、決して、そうではない。
どんなに高い地位や優れた能力等があっても、それが、他人を見下したり、利己的な欲望を満たしたりするためのものであれば、人びとの幸福のために寄与する力とはならないからだ。
人材とは、どこまでも広宣流布誓願に生き抜く、信心の人である。
広宣流布に生きるとは、自他共の幸福のため、社会の繁栄と平和のために生きるということである。
この人生の根本目的が確立されることによって、自身のもっている知識も、才能も生かされ、大きく開花していくのである。
人間の一切の力、可能性を引き出していくカギは、ひとえに信心にある。
「信心」の二字には、すべてが納まっているのだ。
ゆえに、人材の根本要件は、一言すれば、強盛な信心に立つことに尽きるのである。
伸一は、東北の全同志が、広宣流布の大誓願に生き抜いてほしいとの思いを託して、「東北の歌」の制作に取り組んでいった。
時刻は、既に正午を回っていた。
彼は、とりあえず、東北女子部の勤行会を担当する女子部の幹部に伝言を託した。
「皆さんに、次のように伝えてください。
 ──私は今、『東北の歌』を作っています。最初に、女子部の皆さんに聴いていただくために、会合が終了するまでに完成させます」