随筆 民衆凱歌の大行進 No.17 (2015.1.22付)


「SGI」40周年に誓う
人類の平和へ 盟友《とも》よ踊り進もう!
一人立つ勇気を 一人に希望の励ましを
 歌は躍進の力である。青年の歌声の湧くところ、希望が高鳴る。
 歌は友情の絆である。民衆の歌声の響くところ、平和が広がる。
 新春、九州の若人が歌い上げてくれた「歓喜の歌」の大合唱は、世界の友の心にも谺《こだま》している。
 今月中旬、イギリスのタプロー・コート総合文化センターに30カ国のリーダーが集った “欧州広布サミット” では、ドイツの代表が「歓喜の歌」を力強く披露された。
 第2次世界大戦の終結から70周年の今年──フランクフルトには、新たに創価の平和文化会館が誕生する。今こそドイツから新生の平和の光をとの心意気に、欧州同志は拍手喝采を送った。
 ドイツの詩人・ヘルダーリンは詠じた。
 「おお兄弟たちよ われらは盟約《ちかい》をむすんだのだ/美《うる》わしい幸《さち》にみちた 永遠の盟約をむすんだのだ」
 私も、愛する創価の同志に「おお久遠の誓いで結ばれた兄弟姉妹よ!」と呼び掛けたい。
 不思議な宿縁の盟友《めいゆう》である。苦しみ悩む友を救うため、確かな平和の連帯を広げるため、時を同じくして生まれ来た地涌の菩薩であるからだ。
命をなにに使うか
 思えば、非道な軍部政府に抵抗し、投獄されていた戸田先生が、師・牧口先生の獄死を告げられたのは、70年前(1945年)の1月であった。
 戸田先生は、その慟哭《どうこく》と憤激の中で心に定めた誓いを、後年、こう述懐なされている。
 「先生の死をお聞きしたとき、だれが先生を殺したんだと叫び、絶対に折伏して、南無妙法蓮華経のために命を捨てようと決心したのであります」「命を捨てようとしたものに、なんで他の悪口《あっこう》、難が恐ろしいものであろうか」
 先師を奪った魔性への仇討ちは即、広宣流布の大誓願であった。
 自分は何のために生きるか。使命とは、その自覚の異名である。
 自分の「命」を、いったい何に「使う」のか。大目的に生き抜く使命を深く自覚した瞬間から、境涯は大きく広がる。「偉大な師弟の理想のため、わが命を使うのだ」と決めた人生は、もはや何ものにも屈しない。
        ◇
 地上から「悲惨」の二字をなくしたい──これが恩師・戸田先生の熱願であり、我ら師弟の立正安国の使命である。
 「立正安国」とは、何よりも尊厳な生命を、暴力的に侵《おか》し、奪い去るものとの戦いでもある。民衆の目から悲嘆や絶望の涙を拭い、幸福と平和の世界を創る大挑戦なのだ。
大震災を越えて
 1月17日、「阪神・淡路大震災」から20年の節を刻んだ。亡くなられた全ての方々に、あらためて懇《ねんご》ろに追善回向させていただいた。
 わが兵庫、わが関西の友は、消えることのない悲しみも、身も心も潰れそうな労苦も、不屈の闘志で堪え、押し返しながら、生きて生きて、生き抜いてこられた。
 「大悪をこ(起)れば大善きたる」(御書1300㌻)との御金言を命に染めた常勝の盟友は、「悲嘆の涙」を「誓いの祈り」に変えていった。
 被災されたある婦人の苦闘を、私の妻は胸に刻んできた。
 その婦人は、大震災で19歳の愛娘を亡くし、残された生後4カ月の孫娘を引き取った。悲嘆に暮れる間もなく、育児に追われた。母乳をもらいに近所を歩きもした。
 孫娘は、祖父母を「父母」、生みの母を震災で亡くなった「姉」と信じて育った。ようやく真実を伝えられたのは、孫娘が小学3年生の時だった。
 自分が本当は「おばあちゃん」だと明かすと、孫娘は言った。「お母さんは、お母さんやん……」
 今、孫娘は20歳。産んでくれた母、育ててくれた母、 “二人の母” への感謝を胸に成長を誓う。
 この乙女をはじめ、大震災に前後して誕生した若き友たちが、今年、晴れて成人式を迎えた。
 新成人──若き生命には無限の希望がある。
 正月の「箱根駅伝」で、懸命に力走した創価大学の走者たちも、20歳を中心とするメンバーだ。
 新時代を開く大使命の友の幸福と栄光勝利を、祈らずにはいられない。
民衆の大連帯に
 1975年、SGI(創価学会インタナショナル)が発足した原点の地グアムで、40周年の記念行事が盛大に行われた。ご出席くださった知事、市長をはじめ各界の方々のご厚情に心から御礼申し上げるとともに、地元の同志の真心に深く感謝を捧げたい。
 女性の活躍がひときわ光るグアム社会の繁栄を伺い、感無量である。
 当初の51カ国・地域から192カ国・地域へ――今やSGIは人類を照らす平和と文化と教育の大連帯となった。
 「日は東より出づ日本の仏法の月氏へかへるべき瑞相なり」(御書589㌻)――日蓮大聖人が示された「仏法西還」の法理を、学会は現実の地球で厳然と証明してきた。
 この道を開いてくださったのは、東洋広布を叫び、「地球民族主義」を師子吼された戸田先生であられる70年前、敗戦の荒野に一人立った、わが恩師である。
 御書に云く、「一は万が母」(498㌻)と。
 「世界広布新時代」の躍進といっても、全ては、一人の一歩から始まる。
 自らが一人立ち、一人と語り、一人を励まし、一人の心に希望の火を灯すことから始まるのだ。
 この新時代は、まだまだ草創期である。これからも、試練の嵐や壁があるだろう。だが──。
 「人間の営みにあっては、恐れではなく希望が、創造の原理となる」とは、英国の哲学者ラッセルの信念であった。
 人間は今よりも、必ず、より良い未来を築いていくことができる! この透徹した希望を、絶対に手放してはならない。わが生命に具わる最極の可能性を信じてこそ、一人の人間の心を変え、環境をも変えられるのだ。
 御聖訓には、「久遠実成の釈尊と皆成仏道法華経と我等衆生との三つ全く差別無しと解《さと》りて妙法蓮華経と唱え奉る処を生死一大事の血脈とは云うなり」(御書1337㌻)と結論なされている。
 題目を唱え、広宣流布に生きる一人ひとりが、いかに尊貴であり、偉大であるか。大宇宙の根本の法則たる妙法と一体不二であり、久遠元初の仏の大生命が脈々と流れ通っていく。我々自身が、究極にして不滅の「希望」の当体なのだ。
 それを自覚すれば、自在の智慧と力が出る。いかなる生死《しょうじ》の苦悩も打開できないわけがない。
私たちには、人類の希望である後継の未来部が続いてくれている。
未来へ朗らかに
 私たちには、人類の希望である後継の未来部が続いてくれている。結成50周年を祝賀する中等部の大会(12日)には、SGI研修会で来日中の南米パラグアイのメンバーが参加してくださった。富士中学生合唱団のスペイン語の歌声にも大感動されていた。
 希望の歌声は、世界を結び、未来を開く。
 SGI発足の日「1月26日」を誕生日とする音楽家がいる。
 1905年のこの日にオーストリアに生まれ、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」のモデルとなった、マリア・フォン・トラップさんである。
 彼女と家族はナチスのために歌うことを拒否してアメリカに亡命したが、入国審査の際に勾留されてしまった。
 だが、自らも囚われの身となりながら、苦闘の友のために歌い続けた。
 「歌をきいていると、かかえている問題でくよくよしている気持ちが晴れるのだ」と。
 私が対談集を発刊した「平和研究の母」エリース・ボールディング博士は、このトラップ一家と交友を結ばれていた。
 博士は語られていた。
 ──ご一家の姿が「平和は必ず再建できる」との信念を呼び覚まし、今、生きている「その場所」で「平和の創出者」として行動を始めるよう促してくれた、と。
 私たちSGI家族は、歌声も朗らかに、異体同心のスクラムで「不屈の力」「乗り越える力」「励ましの力」を漲らせ、今いる場所から、民衆の平和の連帯を創り、世界に広げていきたい。
        ◇
 「世界広布新時代 躍進の年」の主役は誰か?
 それは、「苦楽ともに思い合せて」の唱題を根本に、決然と戦いを起こす勇気の一人だ。
 今日も自らの地域の大地で、妙法という平和の種を蒔く誠実の一人だ。
 その一人ひとりの地道な挑戦は、地球社会の安穏へ深く連動し、遙かな未来へ花を咲かせる。
 さあ、師子の君よ! 太陽の貴女《あなた》よ!
 共々に、大歓喜の春を勝ち飾り、栄光の創立85周年の山を堂々と、登りゆこうではないか!
 決めた道
  躍り進まむ
   盟友と
  誓いを胸に
    平和の峰へ

ヘルダーリンの言葉は 『ヘルダーリン全集1』 所収「友情の祝いの日に」川村二郎訳(河出書房新社)、ラッセルは 『世界の大思想26』 所収「社会改造の諸原理」市井三郎訳(河出書房新社)、トラップは 『サウンド・オブ・ミュージック アメリカ編』 谷口由美子訳(文渓堂)。