【第18回】 2月に燃える闘魂 2015-2-13


厳しい寒さの中、春告草(はるつげぐさ)の名のごとく、百花に先駆けて、凜然(りんぜん)と梅の花が咲き始めた。
「冬は必ず春となる」(御書1253㌻、「妙一尼御前御消息」)との御聖訓が、北国の健気(けなげ)な同志の姿とともに、ひとしお胸に迫る。
2月は、日蓮大聖人の御聖誕の月であり、佐渡の地で「開目抄」を留(とど)められた月である。
そして、私の恩師である戸田城聖先生の誕生月――今年は生誕115周年にあたる。
不世出の師に出逢えた宿縁に感謝し、先駆けの弟子として、「報恩」の誓いを新たにするのが、私の2月である。
その師の誕生日である11日、私は、妻と共に、総本部の恩師記念会館を訪問した。厳粛に勤行・唱題を行い、尊き地涌の使命に一人立ち、「広宣流布の大願」に生き抜かれた戸田先生を偲(しの)んだ。
さらに、保管されていたゆかりの品々を懐かしく拝見した。
私が先生から頂戴した 『御書全集』 には、師の和歌が墨痕(ぼっこん)鮮やかに認(したた)められていた。
 
山を抜く 力はみちたり 若き身に 励み闘え 妙法の途(みち)に
 
写真集 『戸田城聖』 もあった。その見返しに、私はこう記した。
「師あり 弟子あり 広布あり」――
師弟共戦の広布旅は、いよいよこれからだ! 戦う「力」が、胸に満々とみなぎってきた。
わが青春にあって、師のもとで最も厳しい困難を勝ち越えた日々こそ、黄金の歴史である。
先生の事業を支えつつ、私は懸命に広宣流布の最前線に走った。
最前線とは、いったい、どこか。それは、何よりもまず「地区」である。そこから一人の友、一人の同志の元へ、徹して飛び込んでいった。
戸田先生が誓願された弘教75万世帯という願業の達成へ、「地区」を起点として、戦いを起こしたのである。
青年部の班長を務めながら、蒲田支部大森地区の地区委員を兼任していた。今でいえば「地区部長」である。
当時の日記を繙(ひもと)けば、
「先生、必ず吾が地区も前進させます」
「地区が完璧になるよう、御本尊に祈る」
等々の若き熱情が綴(つづ)られてある。
わが地区での体験を踏まえ、あの「2月闘争」で、新たな拡大への指揮に臨んだ。地区を大事にして、連携と団結を強めながら、さらに皆の顔の見える「組」――今でいう「ブロック」に光を当てていったのである。
突破口を開く原動力は「地区」「ブロック」にあり! 地域に根差した最前線の組織を、全幹部が支えに支え抜くのだ。
この勝利への急所は今も変わらない。否、永遠に変わってはなるまい。
大聖人は「一切の草木(そうもく)は地より出生(しゅっしょう)せり、是(これ)を以て思うに一切の仏法も又人によりて弘まるべし」(同465㌻、「持妙法華問答抄」)と仰せられた。
創価の「地区」「ブロック」は、地涌の人華(にんげ)が湧き出ずる、最も大切な民衆の大地なのである。
希望の種を蒔き、励ましの滋養を注ぎ続ける、地区部長・地区婦人部長の皆様、そしてブロック長・白ゆり長の皆様がおられるからこそ、同志は信心の根を張り、求道の枝葉を伸ばし、生き生きと成長できる。
アメリカの人権の指導者キング博士は語った。
「われわれはばらばらの時よりも、団結している時の方が多くのものを獲得することができます。そしてこれがわれわれのパワーを獲得する方法です」と。
わが信頼するリーダーを中心に、異体同心の団結で、「全地区、全ブロックが和楽のパワーの全面開花を!」「最前線の英雄に健康と人生の勝利あれ!」と、私も、朝な夕な題目を送り続けている。
近年、住民同士のつながりを強化しようと、全国の各自治体で、地域活動への参加を促す取り組みが行われている。
その中で、わが婦人部の皆様も、地域の太陽として、日々、友好と信頼の光を広げておられる。
地域を大切に! この思いは、壮年部や男子部も同じ。だが一般的に、男性陣は、普段、地域でなじみが薄いようだ。
しかし実際には、行事の設営や、防火・防犯のために近隣を回る夜警など、男性に求められる役割も少なくない。
では、どうすれば、男性の地域参加を促進できるのか。
そこで大切なのが、地域貢献に励む、身近な模範の存在だ。「自分にもできるかも」「やってみたい」という前向きな気持ちにさせてくれる。
今、各地の壮年部や男子部の中には、そんな先駆の姿が光っている。
仕事もある。家庭も大事。学会活動も忙しい。それでも「地域のために」と、自治会や青年会、PTAの役員など、推されて地域役職に就き、奔走(ほんそう)している。近隣の清掃など、地道な地域貢献に励む友も多い。
わが街、わが郷土に尽くす「地域部」や「団地部」の方々も、今月17日に部の日を迎える誉れの「農漁光部」、さらに「離島部」の皆様も男女共に「地域の安心の灯台」と輝きわたっている。
地域に幸福と平和の花を! その花々で世界を包みたい――そこに恩師の深き願いもあった。
歴史的な「3・16」の儀式を終えたある日、戸田先生は「メキシコへ行った夢を見たよ」と嬉しそうに言われ、私に「世界が相手だ。世界へ征くんだ」と厳然と語り託してくださった。忘れることはできない。
このメキシコでも、ここ10年で、青年部の陣容が倍増している。その躍進の様子をお聞きした。
――ある地区は、メンバーの7割が男女青年部員。毎回の座談会には数十人が集い、友人も多く参加されている。
だが以前は、その地域に住む同志は、ほとんどいなかったという。
転機は、現在の地区部長夫妻が引っ越してきた、ほぼ10年前のこと。
夫妻は「いつか必ず、わが家を青年でいっぱいにしよう」と誓い、対話を広げ、毎週のように座談会も開いた。しかし、弘教も実らず、夫婦二人だけの座談会も、一度や二度ではなかった。
1年が過ぎようとしていた冬の日。座談会に来ていた一人の青年が言った。「信心に挑戦してみます。僕もあなたたちのようになりたい」と。
この地に初めての青年部員が誕生した瞬間だった。以来、夫妻の励ましに触れ、青年の入会者が相次ぐようになった。
かつて非行に走った、20代の男子部員は入会後、見違えるように成長した。「こんな経験をした自分だからこそ」と、心理セラピストの資格を取得し、青年たちの悩みに寄り添い続けている。
また、この地区がある地域では、以前から治安の悪化が心配されていたようだ。
そんな中、学会に入会した青年たちが、地域貢献に勇んで取り組むようになり、驚きと感動が広がった。住民から「私にも信心の話を聞かせてほしい」等の声も寄せられているという。
使命に燃えた青年の姿は、百万言の理論にも勝り、人の心を揺さぶらずにはいられない。ゆえに青年は、勢いよく人間の中へ飛び込んでゆくことだ。どんどん、友好を広めゆくことだ。
作家の山岡荘八氏は、東北の英雄・伊達政宗を描いた作品に、こう力強く記した。「人間のほんとうの価値は、その行動が他日他人を、どのように多く喜ばせるかにかかっている」と。
来る日も、来る日も、同志の笑顔のため、地域の人びとの喜びのため、わが地涌の勇者の皆様方は走り、語り続けている。いかなる高位の人よりも、有名人や権勢の人よりも、遙かに偉大な人間王者であり、幸福と平和の博士である。
大聖人は、「其(そ)の国の仏法は貴辺にまか(任)せたてまつり候ぞ」(御書1467㌻、「高橋殿御返事」)と最大に信頼してくださっている。
私たちが仏縁を結んだ分だけ、人びとの生命に具わる仏の生命が呼び起こされ、地域も輝きを増していくのだ。
「2月闘争」の伝統は、壁を破る挑戦の心が築き上げた、連続勝利の歴史である。
さあ、勇んで打って出よう! あの友、この友の心に、希望と励ましの春風を届けよう!
わが “本国土” たる地域に、幸福と勝利、安穏と繁栄の春を呼ぶ対話の拡大へ、先駆けようではないか!
 
寒風も やがて薫らむ 春の風 仏道修行と 冬を勝ち越え
キングの言葉は 『マーティン・ルーサー・キング自伝』 カーソン編、梶原寿訳(日本基督教団出版局)、山岡荘八は 『伊達政宗』 (毎日新聞社)。