小説「新・人間革命」勝利島4 015年 7月24日

山本伸一は、各地を訪問した折に、家族のなかで、ただ一人、信心に励んでいるという婦人などと、懇談する機会がよくあった。
そのなかには、「夫は、今は活動しておりませんが、かつては信心に励んでいた時期もありました」という人もいた。
なぜ、活動から遠ざかってしまったのかを尋ねると、人間関係に起因しており、こんな答えが返ってきた。
「男子部のころ、先輩が横柄だったことで、嫌気が差したと言っておりました」
その先輩は、幹部になったことで自分が偉くなったように勘違いし、後輩を部下のように考えてしまったのかもしれない。
「高慢や抑圧では、人心を従えることができぬ」(注)と、フランスの哲学者ボルテールは喝破している。
学会の幹部は、仏子である会員の方々に仕え、皆が幸福へ、一生成仏へと進めるように、応援し、手助けしていく立場である。
未来にわたって、これが、学会の役職の考え方でなければならない。
苦労して広宣流布を担う立場であるからこそ、幹部として信心に励む功徳、福運は大きいのである。
また、学会活動に参加しなくなってしまった娘のことで悩む母親は、こう語った。
「本人が言うには、なぜ折伏をするのかなど、一つ一つの活動の意味がよくわかっていないのに、やるように言われるのがいやで、やめてしまったとのことです」
学会活動することの意味が理解できずにいるのに、ただ、やれと言われたのでは、苦痛に感じもしよう。
そこで大切になるのが、納得の対話である。
「なぜ折伏を行ずる必要があるのか」「その実践を通して、自分は、どんな体験をつかんだのか」などを語っていくことである。
そして、相手が納得したら、一緒に活動し、手取り足取り教える思いで、功徳の体験を積めるよう、応援していくことだ。
信心に励み、功力を実感するなかで、真剣に活動に取り組もうとの思いが湧いてくるのである。