小説「新・人間革命」 勝利島 40 2015年9月5日

仏法の世界で偉いのは誰か──御書に仰せの通り、迫害、弾圧と戦いながら、懸命に弘教に励み、人材を育て、地域に信頼を広げながら、広宣流布の道を黙々と切り開いてきた人である。
人びとの幸せのために汗を流し、同苦し、共に涙しながら、祈り、行動してきた人である。
僧侶だから偉いのではない。幹部だから偉いのでもない。
山本伸一は、話を続けた。
「学会のリーダーは、自分が偉いように錯覚し、会員の方々に横柄な態度で接したり、慇懃無礼な対応をしたりするようなことがあっては絶対にならない。
健気に戦ってきた同志を、心から尊敬することができなくなれば、仏法者ではありません。
もしも幹部が、苦労を避け、自分がいい思いをすることばかり考えるようになったら、それは、広宣流布を破壊する師子身中の虫です。
そこから学会は崩れていってしまう。そのことを、深く、生命に刻んでいただきたい」
伸一の眼光は鋭く、声は厳しかった。
一月二十五日、霧島連山の中腹にある九州総合研修所には、肌を刺すような寒風が吹きつけていた。
午前十一時前、離島本部の第一回代表者会議に参加するメンバーのバスが到着した。
バスを降りると、そこに待っていたのは、伸一の笑顔であった。
「ご苦労様です! よくいらっしゃいました! 広布の大英雄の皆さんを、心から讃嘆し、お迎えいたします」
伸一は、手を差し出し、握手した。島の同志たちも、強く握り返した。彼らには、伸一の手が限りなく温かく感じられた。
その目に、見る見る涙が滲んでいった。
多くは語らずとも、皆、伸一の心を、魂の鼓動を感じた。勇気が湧いた。
この日の代表者会議では、各島にあって、伝統文化を守り、島の発展に尽くすことを決議した。
また、島の実情に応じ、社会性を大切にしながら、活動に取り組んでいくという基本方針を確認し合った。