小説「新・人間革命」 勝利島 43 2015年9月9日

離島本部の幹部らにとって、各島々の訪問は、すべてが驚きであり、感動であった。
西表島では、訪問初日、島の東部の大原大ブロックで映写会などを行った。
山本伸一の沖縄訪問の記録映画が上映された。石垣島で行われた「八重山祭」での「巻き踊り」のシーンとなった。これは、大原大ブロックのメンバーが演じたもので、ハッピ姿で鉢巻きを締めた伸一が、自分たちと手をつないで踊る様子が映し出されると、期せずして歓声と拍手が湧き起こった。
映写終了後も、涙ぐみながら、あの日の感激と決意を語る人が後を絶たなかった。
翌日は、島の西部にある西表大ブロックへ移動しなければならない。しかし、道路はつながっておらず、サバニと呼ばれる小舟を借りていくことになった。
西表島長をしている島盛長英は言った。
「私たちは、普段は東部の大原港から石垣島に出ます。そこで一泊し、翌日の船で、西部の船浦港へ渡ります。石垣島から船浦港の往復は、一日一便しかありません。今回は、時間を短縮するために舟にしました。少し揺れるかもしれません」
この日は、海上風警報が出され、風が強く、波が高かった。皆、雨合羽を着て舟に乗り、その上から防水シートを被って、舟べりにしがみついた。
それでも、激しい波にもまれ、衣服は飛沫で、びしょ濡れになった。しかし、映写機とフィルムだけは濡らすまいと、抱きかかえての一時間であった。船浦港からは、トラックをチャーターして会場に向かった。
道はでこぼこで、車の揺れは激しく、体が飛び跳ねる。離島本部の幹部は思った。
西表の人たちは、こうしたなかで活動しているのか! 十分も歩けば、大ブロックを通り越してしまう東京都区内とは大違いだ。東京にいて、活動が大変だなんて嘆いていたら、西表の人に笑われてしまう
労苦は、仏道修行の最高の道場となる。大変な思いをした分だけ、功徳は大きい。