小説「新・人間革命」 勝利島 59 2015年9月29日

山本伸一は、離島の同志に寄せる自らの思いを語っていった。
「皆さん方の愛する島へ、勇んで馳せ参じ、共に島の発展のために、福運の歴史を築きたい
――それが、かねてからの私の願いであり、その気持ちは、今なお、いささかたりとも変わっていないことを知っていただきたいのであります」
伸一の言葉に、皆、感動で胸が詰まった。
「〝すべての人々とともに、そしてすべての人々のために〟
――これが私の生涯の指針である」(注)とは、キューバ独立の英雄ホセ・マルティの言葉である。
それは、伸一の真情でもあった。
彼は、話を続けた。
「本日の力強い第一回総会を起点として、気候的にも恵まれたこの十月ごろに、来年は第二回総会を、再来年には第三回総会を開催し、これを離島本部の楽しい伝統にしてはどうかと提案申し上げたい。賛成の方?」
全員が賛同の挙手をした。
「それでは、正式に決定させていただきます。当面は、この総会をめざして、前進の節を刻んでいきましょう!」
喜びの拍手が高鳴った。
「皆さん方は、第一期の島の広宣流布を推進し、見事な勝利を収められた。その実証が本日の晴れがましい姿です。
そこで、本日の第一回総会をもって、いよいよ第二期の各島の広宣流布をめざし、勇躍、出発していっていただきたい!」
ここに、離島の新章節の幕が開いたのだ。
伸一は、未来のために、島の広布推進の要諦を語ろうと思った。
「一つの島というのは、見方によれば、国と同じであるといえます。
したがって皆さんは、一国を支えるような大きな心をもって、自分が、この島の柱となり、眼目となり、大船となるのだとの決意に立つことが大切です。
そして、常に島の繁栄を願って、島民のために活躍していっていただきたいのであります」
 
■引用文献
注 「セラフィン・ベージョ氏宛て」(『ホセ・マルティ書簡集2 1888年―1891年』所収)マルティ研究所(スペイン語