小説「新・人間革命」 勝利島 60 2015年9月30日

参加者は皆、真剣な表情で、山本伸一の話に耳をそばだてていた。
「太陽は一つであっても、ひとたび天空に躍り出れば、すべて明々と照らし出されていきます。
同様に、信心強盛な一人の学会員がいれば、島全体が希望に包まれ、歓喜に満たされていきます。
どうか皆さんは、一人ひとりが、その太陽の存在になっていただきたいのであります。
どこまでも信心は強盛に、強い確信をもってください。
そして、決して焦らず、あくまでも堅実に、広宣流布の歩みを運んでいってください。
島というのは狭い社会であり、昔からの慣習等も息づいている。
そのなかで信頼を勝ち得ていくには、賢明な日常の振る舞いが大事になります。
誰人に対しても、仲良く協調し、義理を重んじ、大きく包容しながら、人間性豊かに進んでいかれるよう、願ってやみません。
島のなかで、ささいなことで人びとと争ったり、反目し合ったり、排他的になるようなことがあっては絶対にならないし、孤立してしまうようなことがあってもなりません。
仏法即社会です。世間の目から見ても、〝立派だ。さすがだ!〟と言われるような、聡明な活躍をお願いしたい。
それが、広宣流布への第一歩であると確信し、身近なところから、着実に信心の根を張っていっていただきたいのであります」
伸一は、長旅で疲れているであろう離島の同志の体調を思い、話は短時間で切り上げようと思った。
最後に、「ただ一つ心肝に染めてほしい御文があります」と強調し、日蓮大聖人が佐渡で認められた「開目抄」の一節を拝読していった。
「我並びに我が弟子・諸難ありとも疑う心なくば自然に仏界にいたるべし、天の加護なき事を疑はざれ現世の安穏ならざる事をなげかざれ、我が弟子に朝夕教えしかども・疑いを・をこして皆すてけんつたな(拙)き者のならひは約束せし事を・まことの時はわするるなるべし」(御書二三四㌻)