小説「新・人間革命」 勝利島 61 2015年10月1日

「開目抄」の一節を拝した山本伸一は、力を込めて語った。
「どうか、この御文を、直接、御本仏・日蓮大聖人から自分に賜ったものと受けとめていただきたい。
どんな大難があったとしても、疑ったり、嘆いたりすることなく信心を貫いていけば、必ず成仏できることを断言された御文です。
たとえ、島の同志の数は少なくとも、励ましてくれる幹部はいなくとも、私は立つ!と決めて、広宣流布という久遠のわが使命を果たし抜いていただきたい。
そして、今再び、この信心の極理を説かれた一節を深く生命に刻み、一家一族が、未来永遠に栄えゆくための福運の根っことなって活躍されるよう、念願しております。
島の皆さんに、くれぐれもよろしくお伝えください。お体を大切に!」
伸一の話が終わると、万雷の拍手が起こり、いつまでも鳴りやまなかった。
感激の怒濤が、同志の胸中に激しくうねった。
誰もが、伸一の思いをかみ締めていた。誰もが、決意を新たにしていた。
大感動のなか、歴史的な第一回離島本部総会は幕を閉じたのである。
伸一の離島本部総会参加者への激励は、翌八日も続いた。
この日、彼は聖教新聞社前で、島へ帰るメンバー約百七十人と、三グループに分かれ、記念撮影をした。
皆に次々と声をかけていった。
「よく眠れましたか。東京は島と気候も違うし、騒がしいでしょう」
「風邪をひいたりしませんでしたか」
すると、一人の壮年が弾んだ声で言った。
「先生は、私たちのことを最高に気遣ってくださいました。
人間性の輝きというのは、人への気遣いに表れることを知りました。
私も島にあって、周囲の人たちを心から気遣える自分になろうと思います」
伸一の力強い声が響いた。
「ありがとう! すばらしいことです。皆さんの手で勝利島を築いてください」