小説「新・人間革命」 力走7 2016年3月31日

山本伸一は、群馬の歌「広布の鐘」の歌詞を届けてもらう時、伝言を添えた。
「作曲も、私の方で依頼しておきます。曲ができたら、すぐに伝えます」
群馬のメンバーは、一日千秋の思いで、曲の完成を待った。
十一月二十一日夜、群馬センターでは、県幹部らが集い、十二月度の活動をめぐって協議会が行われていた。
そこに電話が入った。伸一に同行していた幹部からであった。
「群馬の歌の曲ができました。これからテープで流しますので聴いてください」
電話に出た県の幹部が答えた。
「しばらくお待ちください。それを録音させていただきます」
受話器から歌声と調べが響いた。希望あふれる、力強い歌となっていた。
  
 一、我等を守り 見つめたる
   赤城の風は 妙法と
   群馬の天地に 幸薫れ
   さあ肩くみて 友よ起て
  
 二、あふるる文化の 上毛に
   今再びの 広宣の
   この世の夢か 楽土をば
   さあ築きゆけ 鐘鳴らせ
  
 三、ロマンの歴史 満々と
   群馬の足跡 朗らかに
   仰げば天に 虹光り
   ああ我等の誓い 忘れまじ
   利根と榛名に 忘れまじ
  
それは、二十一世紀への新しき前進を開始する群馬の、旅立ちの曲であった。
皆の脳裏に、山紫水明の美しき郷土の天地が次々と浮かんだ。その地で戦う自分たちを、じっと見つめる、伸一の心を感じた。
電話から聞こえてくる歌と曲に耳を傾ける県幹部の目は、涙に潤んでいた。