【第4回】 正義の王者の誇り (2016.3.30)

広布の使命に青年よ立て
「魂の炎のバトン」握り拡大の春へ!
 
兵庫池田文化会館から復興の神戸市内を望む。左手奥には赤い神戸ポートタワーがそびえる(2000年2月、池田SGI会長撮影)
            
 「創価学会は宗教界の王者である!」
 昭和三十三年(一九五八年)の三月十六日──わが師・戸田城聖先生は、不滅の「広宣流布記念の大儀式」において、宣言された。
 それは、戦時中の大弾圧を勝ち越え、七十五万世帯の弘教を成就された先生の凱旋であられた。
 そして、門下の私たち青年に、厳然と託してくださった宝冠である。
 日蓮大聖人は、毅然と同志の先頭に立つ千日尼へ、「此の経文は一切経に勝れたり地走る者の王たり師子王のごとし・空飛ぶ者の王たり鷲のごとし」(御書一三一〇ページ)と仰せになられた。
 「宗教界の王者」とは万人成仏の法を明かした「一切経の王」たる法華経の精神を身に体して、広宣流布という最も至難な大聖業を遂行する王者のことである。
 「地走る者の王」の如く走り叫び、民衆を不幸に陥れる邪悪を打ち破る正義の師子王のことだ。
 我ら創価の師弟は、未来永遠にこの「王者」の心で、威風も堂々と戦い続けていくのである。
恩師の夢を抱き
 「3・16」の儀式に続く日々は、対話の一瞬一瞬が、師から弟子への相伝の宝の時間であった。
 ある日の朝、先生は、私を傍らに呼ばれた。
 「大作、メキシコへ行った夢を見たよ」
 「待っていた、みんな待っていたよ。日蓮大聖人の仏法を求めてな」
 体は衰弱されていても、恩師の胸には、壮大なる世界広宣流布の夢が広がっていたのである。
 御書に「広宣流布の時一閻浮提の一切衆生法華経の行者となるべきを涌出とは云うなり」(八三四ページ)と仰せである。
 誰もが、地涌の菩薩の使命をもっている。必ず、その尊き使命に目覚める時が来るのだ。
 「みんな待っていたよ」との言葉から、先生の悠然たる大確信が伝わってきた。
 先生は私に言われた。──生きろ。うんと生きるんだぞ。そして、世界に征くんだ!
 不二の弟子は、「空飛ぶ者の王」鷲の如く勇気と智慧若き翼を広げ、嵐も恐れず、一閻浮提広布の天空へ舞いゆけ──この師の熱望に応えて、私は先陣を切った。
  
 私がメキシコに第一歩を印したのは、先生との語らいから七年後(一九六五年)である。
 先生が夢にまで思い描かれた天地で、メキシコの革命記念塔などを同志と共に視察した。
 以来、広布五十周年の佳節を迎えた昨年、その革命記念塔の目の前に、創価の宝城「メキシコ平和文化センター」が誕生した。半世紀前、約十人だった宝友は、今や七千人の地涌の連帯と輝いている。
 十七世紀のメキシコで活躍した女性詩人ソル・フアナは詠った。「ひとつ苦しむごとに、あなたは栄光に近づく」と。
 わがメキシコの同志の前進にあっても、あまりにも尊き太陽の母たち、女性たちの無数の労苦があったことを、私は忘れない。
 メキシコ発展の礎は、「求道」の一念である。
 私がメキシコに足跡を留めたのは五回。飛行機の乗り継ぎで立ち寄り、空港に着いたのが明け方の時もあった。それでも、友は駆け付けてくれた。その一期一会が、永遠の黄金の思い出である。
 二十年前、キューバコスタリカを初訪問してアメリカへ向かう際、カリブ海に臨む港湾都市ベラクルスでも、空港が出会いの舞台となった。
 空港ロビーで「ヨウコソ!」と歓迎してくれた少女も、その後、白蓮グループのリーダーとして活躍し、地域で社会で、立派に貢献している近況を伝えてくれた。
 わが同志が、世界のいずこでも、福徳と勝利の実証を示してくれていることが何より嬉しい。
 広宣流布は、人間に会い、仏縁を結ぶことだ。妙法の種を蒔き、一人ひとりの生命に具わる無限の可能性を解き放っていくことだ。そして「人間革命」という王者の勝利劇を、共々に綴っていくことである。
 
世界照らす太陽
 「観心本尊抄」には、「天晴れぬれば地明かなり法華を識る者は世法を得可きか」(御書二五四ページ)と明言なされている。
 この太陽の仏法を受持した若人が、己の誓願の国土で、時代の闇を晴らす希望の光を放つのだ。
 アフリカ各国の青年部も、世界広布新時代の「3・16」を勝ち飾っている。
 カメルーンの青年部は、これまでで最大の千二百人の総会を行い、席上、百人の友へ新たに御本尊が授与された。
 「アフリカの世紀」を担い立ち、勇気の波動を広げるリーダーが凜然と決意を寄せてくれた。
 「自身が勝ち、皆が勝利できるように一人ひとりを支え、そして偉大な世界宗教の道をいよいよ邁進していきます」と。
 創価の若き世界市民の連帯は、生命尊厳の宝塔を揺るぎなく林立させながら、平和の地球社会を照らし始めているのだ。
 
未来を恐れない
 真の「王者」は、次代の発展のため、確固たる後継の流れを創り上げる。
 恩師が「一度会ってみたいものだ」と言われたインドの初代首相ネルーも、独立が実現した後、社会改革の“継承”のため、真摯に手を打っている。
 世代間に生ずる意識の差など困難な課題を直視しつつ、次の世代を薫陶し、根本の精神性を伝え、若き生命の最善の力を引き出すことに焦点を定めていた。
 この“継承”を信じるゆえに、ネルーは「わたくしは未来を恐れない」と言い切ったのである。
 今、仏教発祥の天地たる、このインドでも、法華経人間主義の源流を受け継いで前進する創価の青年たちに、絶大なる信頼が寄せられている。
 大聖人は、地涌の菩薩の強さを、「能く能く心をきた(鍛)はせ給うにや」(御書一一八六ページ)と洞察なされた。
 仏道修行という、最も地道にして、最も偉大な生命の錬磨によって、心を鍛えている地涌の若人ほど、頼もしき正義の後継者はいないのだ。
 この誇りと自信をもって、青年部の君たちは胸を張ってもらいたい。
 
 それは、大聖人の御精神を踏みにじる、民衆蔑視の邪宗門との熾烈な攻防が続いていた二十五年前(一九九一年)の三月のことであった。
 「3・16」を記念する全国青年部幹部会が愛知・名古屋を舞台に、意気高く開催された。勇んで出席した私は、創価の「この道」を走りゆく、わが中部青年部に、後継を頼むと熱願した。
 さらに、「『魂の炎のバトン』を君たちに」と題するメッセージを若き弟子たちに贈ったのだ。
 本門の師弟の力走を続けて、私が神戸の大通りにそびえ立つ兵庫の文化会館を初訪問したのは、この年の十月である。
 記念の総会では、大阪事件の無罪判決の歴史を通し、苦楽を共にしてきた常勝関西の同志と、あらためて「仏法は勝負」と、生命に刻んだ。
 ──いかなる悪戦苦闘をも突き抜けて、断じて勝ち切るのだ! 弟子の勝利こそ、師への最高の報恩となるからだ、と。
 わが兵庫、わが関西の共戦の友は、その四年後の阪神・淡路大震災の悲劇も決然として乗り越えてきてくれた。
 この兵庫の文化会館で先月、全国男子部幹部会が行われた。師弟の大道を歩み抜く青年たちの姿が、私は頼もしかった。
 「不幸な人の味方となり、真実に全民衆が、安心して暮らしていける世の中を築き上げよう」
 私が、大阪事件の勝訴の前夜に尼崎で叫んだ、この「立正安国」の闘魂を、常勝の負けじ魂の若人たちは朗らかに発揮してくれているのだ。
 
追撃また前進だ
 「追撃の手を緩めるな!」──これは私たち青年が、恩師・戸田先生から直々に頂戴した最後の指針である。
 追撃だ! 前進だ! 立つ時は今だ。前進なくして勝利も幸福もない。
 先日、久方ぶりに訪れた文京区の同志との合言葉も「前進」である。
 広宣流布は、永遠に仏と魔との戦いだ。あえて三障四魔をも駆り出し、勇猛に打ち破り、生命の凱歌を上げていくのだ。
 栄光の「5・3」へ、いよいよ、わが男女青年部の「正義拡大月間」がスタートした。
 さあ、青春乱舞の四月。
 青年よ進め。広布後継の「魂の炎のバトン」を握り、快活に進め!
 激流が巌を越えて進むように勢いよく、四月も断固と勝ち切ろう!
  
 烈々と
  広布を継ぎゆけ
   弟子なれば
  王者の闘魂
   日々に光らせ
  
 (随時、掲載いたします)
 ソル・フアナの言葉はオクタビオ・パス著『ソル・フアナ=イネス・デ・ラ・クルスの生涯──信仰の罠』林美智代訳(土曜美術社出版販売)、ネルーはメンデ著『ネールは主張する』大山聰訳(紀伊國屋書店)。