小説「新・人間革命」 力走14 2016年4月8日

静岡県幹部会で「静岡健児の歌」が発表された十一月二十九日夜、山本伸一は、空路、東京から大阪へと向かっていた。
伊丹空港大阪国際空港)から大阪・豊中市の関西牧口記念館への車中、同乗した副会長で関西総合長の十和田光一が、意を決したように語り始めた。
「関西婦人部長の栗山三津子さんのことで、報告があります。実は、先日、癌と診断され、手術をしなければなりません。幸い、早期発見で命に別状はないとのことです」
伸一は、詳しい病状を尋ねた。
そして、記念館に到着すると、すぐに栗山に宛てて手紙を書いた。
「病気のこと、心配しております。私も、強く、御祈念いたします。長い人生と長い法戦のうちにあって、さまざまな障魔があることは当然です。
断固、病魔を打ち破って、また生き生きと、共に学会の庭で勇み活躍されますように、私たちは待っております。
ともかく、少し、人生、思索の時間も必要なものです。それを御本尊様が、お与えくださったと思うことです」
伸一は、手紙を書き終えると、十和田に言った。
「栗山さんに無理をさせるわけにはいかないので、関西婦人部長の後任人事も検討した方がいいだろう」
そして、人事の相談にのりながら、病への考え方について語っていった。
「長い間、頑張り抜いてくれば、疲労がたまったり、病気になったりすることも当然あるよ。そもそも仏法では、生老病死は避けることができないと説いているんだもの。
だから病気になったのは信心が弱かったからだ。幹部なのに申し訳ないなどと考える必要はない。そう思わせてもいけません。
みんなで温かく包み、『これまで走り抜いてきたのだから、ゆっくり療養してください。元気になったら、また一緒に活動しましょう』と、励ましてあげることです」