小説「新・人間革命」 力走22 2016年4月19日

山本伸一を囲んで、高丘宅での語らいは弾んだ。話が「名張」の地名に及ぶと、伸一は言った。
「『名張』というのは、いい名前ではないですか。『名を張る』──堂々と『創価』の名を掲げ、社会にあって、信頼と勝利を勝ち取っていくという気概を感じる地名です。
全中部、全国に、三重に名張ありと、その名を轟かせる、広宣流布の模範の地となってください」
また、高等部員にも声をかけた。
「頑張って、創価大学に来てね。二十一世紀のリーダーを育てるために創立した大学です。世界の未来は、君たちに託すしかない。
皆さんは、大切な使命の人です。だから、しっかり勉強して、社会的にも存分に力を発揮できる人になってください。
若い時には、うんと苦労して、努力することが大事です。それが、生き方の土台になる。
青春時代に苦労を避けていれば、しっかりとした土台は築けず、堅牢な人生の建物を造ることはできないよ」
そこに、高校三年生になる高丘の長女の寿子が、学校から帰ってきた。
峯子が、微笑みながら声をかけた。
「お帰りなさい!」
既に就職が決まったという寿子に、伸一は「立派な女子部のリーダーに」と励ました。
それから、色紙に「高丘桜」「母桜」などと揮毫して、集っていたメンバーに贈った。
伸一が帰ろうとすると、小さな子どもを背負った婦人と玄関で顔を合わせた。彼が高丘宅にいると聞いて、駆けつけてきたのだ。
「では、一緒に写真を撮りましょう」
さらに、一人ひとりと握手を交わした。瞬間、瞬間、出会った友のために何ができるかを考え、全力で行動した。
人間は、励ましによって育っていく。
そして、人を励ます作業とは、生命を、知恵を、力を振り絞って、相手の心の扉を開き、深く分け入り、発心のための養分を注ぎ込む真剣勝負の対話といえよう。