小説「新・人間革命」 力走21 2016年4月18日

四月二十二日、山本伸一は、翌日に行われる「三重文化合唱祭」に出席するため、三重研修道場を訪問した。
伸一は、研修道場に来ていた高丘秀一郎に声をかけた。
「その後、目の調子は、どうですか」
高丘は、満面の笑みで答えた。
「はい。先生にご指導を受けてから、真剣に唱題に励みましたところ、十日ほどで『聖教新聞』の文字が読めるようになり、今は御書の文字が読めます。
日ごとに、視力は回復しつつあります」
「それはすごいね。病を治す根本の力は、自身の生命力なんです。その手助けとなるのが医学の力です。
信心根本に、どこまでも生命を磨き、鍛えていくことが大事なんです」
伸一は、合唱祭の次の日も高丘と会った。
「今こそ、唱題し抜いて、病を見事に乗り越え、信心への大確信をつかむ時です。
そして、仏法の偉大さを証明するんです。それがあなたの使命です。
信心は、どれだけ困難を乗り越え、功徳の体験を積んできたかが大切です。それが確信につながっていくからです。
今度、お会いする時には、もっと、もっと元気になってください」
三重研修道場での語らいから七カ月余が過ぎていた。
伸一を自宅に迎えた高丘は、頬を紅潮させながら報告した。
「左の目の方は、題目が五十万遍になった時に視力は〇・五になり、七十万遍で〇・七に、百万遍になったら一・〇になっていたんです。
右目は見えませんが、生活をするうえでは、ほとんど不自由は感じません。仏法の力を、心の底から感じています」
「すばらしいことです。釈尊から仏法を聞いて、歓喜踊躍した弟子たちによって、仏法は広まっていった。
あなたも今、仏法の功力を生命で感じ、歓喜している。
その喜びを人びとに語り、歓喜を共有していくことが広宣流布の戦いなんです」