小説「新・人間革命」 力走24 2016年4月21日

山本伸一は、さらに「一生成仏抄」の「仏教を習ふといへども心性を観ぜざれば全く生死を離るる事なきなり、若し心外に道を求めて万行万善を修せんは譬えば貧窮の人日夜に隣の財を計へたれども半銭の得分もなきが如し」(御書三八三ページ)の御文に即しながら話を進めた。
「自分の生命を磨き、わが胸中の仏性を涌現する以外に、崩れることのない絶対的幸福境涯を確立する道はないんです。
しかし、自らが妙法蓮華経の当体であると信じられなければ、本当の意味での自信がもてず、自分の心の外に幸せになる道を求めてしまう。すると、どうなるか。
周囲の評価や状況に振り回されて、一喜一憂してしまう。たとえば、社会的な地位や立場、経済力、性格、容姿など、すべて、人と比べるようになる。そして、わずかでも自分の方が勝っていると思うと優越感をいだき、自己を客観視することなく、過剰に高いプライドをもつ。
ところが、自分が劣っていると思うと、落胆し、卑屈になったり、無気力になってしまったりする。
さらに、人の評価を強く意識するあまり、周りのささいな言動で、いたく傷つき、こんなに酷いことを言われた”“あの人は私を認めていない”“全く慈悲がないなどと憎み、恨むことになる。
また、策に走って歓心を買うことに躍起となる人もいる。
実は、怨嫉を生む根本には、せっかく信心をしていながら、わが身が宝塔であり、仏であることが信じられず、心の外に幸福を追っているという、生命の迷いがある。
そこに、魔が付け込むんです。
皆さん一人ひとりが、燦然たる最高の仏です。かけがえのない大使命の人です。
人と比べるのではなく、自分を大事にし、ありのままの自分を磨いていけばいいんです。
また、自分が仏であるように、周囲の人もかけがえのない仏です。だから、同志を最高に敬い、大事にするんです。
それが、創価学会の団結の極意なんです」