小説「新・人間革命」 力走37 2016年年5月7日

高知支部結成二十二周年記念幹部会は、午後一時半過ぎから始まった。
山本伸一は、高知県創価学会の興隆と同志の幸福を祈念して厳粛に勤行したあと、皆で万歳を三唱しようと提案した。
宗門の僧らによる卑劣な仕打ちに耐え抜いた大切な同志の敢闘を、心から讃えたかったのである。
そのあと、伸一と峯子の高知訪問を記念して、二人に花束が贈られた。
伸一たちは、その真心に深く感謝し、皆の了承を得たうえで、それを壮年部、婦人部の高齢者の代表に贈った。
このうち、婦人部の代表は、高知県東端の徳島との県境にある
安芸郡東洋町から、車で三時間かけてやって来た人であった。
参加者の多くは伸一と初対面であり、皆、どことなく緊張している様子であった。
彼は、その緊張をほぐそうと、自ら司会を買って出て、県の幹部らにあいさつをするよう、次々と指名した。
予期せぬ事態に、絶句したり、慌てたりする様子が爆笑を呼び、硬い雰囲気は一気にほどけた。
各部の合唱団による晴れやかな合唱、記念品の贈呈のあと、マイクに向かった伸一は、六年半ぶりの訪問ではあるが、日々、高知の友を思い、夫婦で題目を送り続けてきたことを語った。そして、力強く訴えた。
広宣流布は、現実社会のなかを、一歩一歩、切り開いて進む、長い、長い遠征です。
その前途には、不況など、生活を圧迫する、さまざまな大波もあります。
したがって、生活においても明確な長期の展望を立てるとともに、特に足元の経済的な基盤を固めていくことが大切になっていきます。
信心をしているから、どうにかなるだろうという考えは誤りです。
仏法は道理です。展望なき生き方は、長続きしません。
また、生活設計がいい加減で、日常生活のリズムも乱れていれば、厳しい現実を乗り越えていくことはできません。
すべて『信心即生活』です。
身近な一歩を大切にしながら、生活の安定と向上をめざし、強盛な信心を貫いていただきたい」