小説「新・人間革命」 力走36 2016年年5月5日

懇談会で山本伸一は、参加者の近況に耳を傾け、ピアノを弾いて励まし、記念のカメラに納まった。
その夜、彼は、高知の県幹部らに語った。
「私は全力で働きます。一人でも多くの高知の同志にお会いするつもりです」
翌十二月五日は、前日とは打って変わり、南国土佐らしい快晴となった。
この日、高知文化会館で、昼には高知支部結成二十二周年の記念幹部会が、夜には同会館の開館一周年記念幹部会が行われることになっていた。
参加者は、午前中から文化会館に集って来た。
伸一は、正午過ぎには二階ロビーに出て参加者の激励にあたった。
会館の窓から外を見ると、人びとの列は絶えなかった。
記念幹部会の参加者だけでなく、伸一の訪問を聞き、ひと目でも会えればと、やって来た人たちも多かった。
彼は、高知文化会館を出て、会館前を流れる鏡川の土手を歩きながら、集って来る人たちに次々と声をかけ、握手を交わし、一緒に記念撮影を重ねた。会館周辺の、学会員が経営している喫茶店や雑貨店にも立ち寄った。
会館での記念行事を祝賀し、餅つきをしているメンバーのもとへも足を運び、労をねぎらい、励ましの言葉をかけた。
伸一は、固く心に決めていた。
波瀾、激動の末法にあって、誰が広宣流布を進めるのか。この方々しかいない。
学会員は、自らの宿業と悪戦苦闘しつつ、人びとの幸福のために全力で駆け回ってくださっている。
まさに、大使命をもって出現した地涌の菩薩であり、尊き仏子なのだ。
私は、瞬時も無駄にすることなく、目に映る一人ひとりに魂を注ぎ、合掌する思いで、激励の限りを尽くし抜こう。
決して、障魔に敗れ、倒れたりする人を出してはならない!
御聖訓には、「木をうえ候には大風吹き候へどもつよ(強)きすけ(扶)をか(介)ひぬれば・たうれず」(御書一四六八ページ)と。
励ましは、勇気となり、力を生む。